第210話 砂糖の威力
王宮の奥宮の庭で、やんごとない人とのお茶会。字面だけならおとぎ話みたいだよねー。
実際には、銀髪陛下のおばあさまを前に、ミルクレープをちまちま食べています。
味はまあまあかな。個人的にはパフェの方が出来が良かった。ああ、やっぱりカカオが欲しい。チョコ食べたい。
「それにしても、こんなお菓子があるとはねえ」
「これらには、砂糖が欠かせないそうです」
「ほう。それはまた、なかなか高価なお菓子だったのね」
「砂糖は現在、くびれからの輸入に頼っている状態です」
「そう……」
太王太后陛下が、何やら考え込んでます。あのー、私、いつまでここにいないといけないんですかねー? もう砦に帰りたいんですけどー。
「もう少し、安価に砂糖を手に入れる方法はないかしら?」
「ございます」
「本当に?」
驚く太王太后陛下に、領主様がいい笑顔を見せた。あ、これは黒い笑顔だ。
「砂糖の生産国から、直接買い付ければいいのです」
「生産国……確か、東の国だったわね」
「はい」
あれ? 東? 西じゃなかったっけ?
『西回りですと、東回りよりも距離があります』
ああ、なるほど。大西洋と太平洋みたいなもんなんだ。
「我が国の港を整備し、大型船を建造してあちらの国と直接取引を、と思っております」
「そう……」
あ、何か太王太后様の目がきらーんと光った。
「援助は惜しみません。早急に取りかかりなさい」
「ありがとうございます」
領主様が、黒くない笑みを満面に浮かべてる。えーと、もしかしなくても、前に話した大きな船作って向こうの国と商売しましょー、ってやつですよね?
で、ここで太王太后陛下の援助を得られる事が決まった、と。でも、そんな大事な事、庭園で決めちゃっていいのかな?
「いいんだよ。今回支援していただくのは、あくまで太王太后陛下個人だ。あの方個人が持つ資産は莫大でね。港や大型船の建造の費用くらい、簡単に出せるよ」
そうなの!? 王族なんだからお金持ちってのはわかるけど、個人でそんなに資産を持ってるってのも、凄いなあ。
こんな話をしているここは、王宮からの帰りの馬車の中。ジデジルとじいちゃんは、先に帰っているそうな。置いて行かれた……
領主様の話によると、太王太后様の実家からの相続分なんだって。それも、色々な国の色々な王家や貴族家に繋がっていて、あっちこっちからの遺産が陛下個人に集まった結果なんだとか。
で、今回その個人資産から支援金を出してもらうって事になった訳だ。あくまで太王太后陛下個人のお金だから、面倒な手続きとかはいらないんだって。
国庫のお金だと、議会にかけたり何だりと大変なんだってさ。それもあって、太王太后陛下を狙い撃ちしたな、領主様。
「船の建造はまだしも、港を作るお金なら、私も少しは出しますよ?」
「それは嬉しいが、サーリのお金は別の時にとっておきなさい。港や船の建設は、国家事業にも等しいからね」
領主様によると、本来なら国家予算を組んでやる事らしいけど、王家直轄地ではなくコーキアン領内に作る港や造船所になるので、全て領主様がお金を出す事になるんだって。
「将来的に国の利益になるようなら、港も造船所も国に買い取ってもらう」
今のところ、西……じゃなくて東の国々との交易がうまく行くかどうかわからないから、一領主の仕事として進めるらしいよ。
でも、さすがの好景気に浮かれるコーキアン領とはいえ、国が主導でやるような大きな工事を丸抱えするのは大変な事。
だから、個人で出資してくれる人が欲しかったそうな。それが太王太后陛下。
「他にもいるけれどね。一番の大口出資はあの方だよ」
何でも、太王太后陛下は大の甘い物好きらしい。砂糖も、個人的に商人を使って輸入しているんだそうだよ。
「あの方なら、砂糖が安価で手に入ると言えば食いついてくると思ったよ」
領主様、また黒い笑顔をしてますよー。
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