第207話 一件落着?
ダガードの王城、謁見の間にて、覗き見というには大分堂々とあれこれ見ている最中です。
そして、ジデジルの一言に不本意ながら意地悪王子と一緒に度肝を抜かれてますよー。
「ど、どういう事だ? 総大主教」
「どういう事も何も、神子様が大変傷ついておられる事は、あなたもよく承知している事かと」
「う……」
「ああ、その辺りの事は、以前そちらの王宮にお邪魔させていただいた際に、教皇聖下と共にしっかり、あなたの父君や弟君に伝えてあります」
「そ……」
「その上で、神子様はあなた方の行為により、深く傷ついておられると重ねて言っておきましょう。その神子様が、いつまでもこの大陸にとどまっているとお思いですか?」
「そんな……ばかな……」
いや、本当にそんなばかな、だよ。確かにこの大陸を留守にしていた時もあったけどさあ。今、ここにいるんですけど。
それにしても、気付かないものなんだね。私はまだしも、じいちゃんには気付きそうなものなのに。
あ、今気付いた。じいちゃん、さりげなく認識を阻害する術式使ってる。なるほどー、だから意地悪王子も気付かないんだ。
でもこれ、じいちゃんをよく知ってる人なら引っかからない程度だね。という事は、意地悪王子はじいちゃんの事もよく知ろうとしてなかったんだな。
じいちゃん、これでも南ラウェニアでは高名な魔法士なのに。
ジデジルの言葉に何も言えず呆然とする意地悪王子に、彼女は最後通牒を叩き付けた。
「神子様は、既にこの大陸から旅立たれました。いつお戻りになるか、そもそもお戻りになるおつもりなのかもわかりません」
いや、砦があるので帰ってきます。てか、帰ってきてます。
「ああ! おいたわしや。生涯を誓った伴侶に裏切られ、あまつさえ身を削ってまで救った国からも背かれて、一体どれほどお辛かった事でしょう!!」
あー、まー、そこそこ厳しかったよ? でも、すぐに諦めちゃったからなあ。親が親だからか、昔から諦める事だけは得意なんだよねえ。
それも、最近ではちょっと怪しくなってきたけど。
「そ、それに関しては――」
「ですから、最初から神子様は教皇庁においでいただくのが筋だと申し入れていましたのに。それでも、神子様がお幸せにお健やかにお過ごしになられるのならと、断腸の思いで聖下共々決断しましたのに!!」
「う……」
「大体、あなたもあなたの父君も弟君も、それにあの国の者ども全て、神子様の尊さを軽んじすぎです。いいですか、神子様というのは――」
「総大主教、その話はどこまで続くのだ?」
「まあ、私といたしました事が、とんだご無礼を。では、ゼシテート殿下には別室にて特別講義を行いましょう」
「別室!? 講義!?」
「何か、問題でも?」
「いえ……」
意地悪王子、完敗。まさか、こんな逆撃を受けるとは思っていなかっただろうなあ。読みが甘そうだもん、意地悪王子。
本当にジデジルと共に別室に引き立てられていった意地悪王子の背中を見送ると、謁見の間が途端に静かになる。
「ふう……面倒な奴だな、本当に」
「あれがローデンの第二王子とは……王太子殿下も、似たようなものですかな?」
「さてな。国交のない国の王族がどうであろうと、知った事ではない」
「まあ、距離も離れていますしね。さて、サーリ、どうだった?」
え? ここで私に話を振るの? 正直に感想を述べてもいいでしょうか?
「疲れました」
「はっはっは。そうだろうな。だが、これでしばらくローデン関係は収まろう。フィエーロ伯からも、第二王子が賠償金をしっかり払ったので、例の御仁は牢から出して向こうへ引き渡したと聞いている」
あー、やっぱり意地悪王子がお金持ってきたんだ。これでヘデックは国に帰るでしょう。神子はこの大陸から旅だった……って事になってるんだから。
「それにしても、ローデンは何故今更神子を探すんだ?」
「神子様の夫であった第三王子が、他国の仕掛けた女に入れ込んだ結果、神子様に国ごと捨てられた訳ですから、外聞を気にしたのでしょう。それに、神子様が国を出てからローデンでは天災やら不作が続いているそうですから、それらを神子様に鎮めていただこうと思っているのではないでしょうか」
え? 天災を鎮めるとか、無理無理無理。やった事ないもん。
『あの国に戻れば、天災は防げます』
そうなの? うーん、でももう、あの国には戻りたくないなあ。
『願いのままに』
検索先生がそう言うなら、いいんだね。良かった。ローデンは大変だろうけど、自分達の力で頑張ってもらおう!
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