第180話 金ぴかドラゴン

 翌日、日が昇って目が覚めたら、護君からのお知らせが。


『来訪者です』


 映像で見せてもらったら、見た事がない人。なんか金ぴかの服着て金ぴかの髪を伸ばしている。何だろう、古いタイプのロックな人みたい。


 よく見たら、所々金ぴかの服が焦げてる。汚れた服を着るのは、感心しないなあ。


 着替えてジデジルと一緒に角塔へ。二階のダイニングに行くと、じいちゃんがコーヒーを入れていた。


 こっちにも護君の映像を回してもらって、三人でコーヒーを飲みながら見る。


「誰だろね?」

「……とりあえず、話くらいは聞いてやってはどうかの?」


 そう? 仕方ないから、こっちから門まで出向いた。


「何がご用ですかー?」

「き、貴様! この我に向かって何という――」

「護くーん、お客様がお帰りでーす」

『了解しました』

「ま、待て! 待ってくれえええ!」


 うるさいなあ、もう。




 まあ、わかってたけど、金ぴかな人は金ぴかなドラゴンだった。人の姿になれるんだ……


 服が焦げているのはあれか、爆発を受けたからなんだね。一応、私のせい? でも、あんな時間に来る方が悪いよね。


「で? 何しに来たの?」

「我にも、果実をください」

「ちゃんと言えるじゃない。なんであんな夜遅く、あんな上からの態度で言ってきたのよ」


 ドラゴンが黙っちゃった。何か、言いたくない事でも? じろりと見ていると、もごもごと言い始めた。


 要するに、私に吹っ飛ばされた後、島のドラゴンに泣きついたらしい。そこで島のドラゴンが神馬と一緒にお説教したらしいのだ。


 ドラゴン、ありがとう。後で果実をたくさん届けるね。


「それで、この姿なら神子が会ってくれるだろうから、これで行けと」


 うん、まあまたあのドラゴンの姿で来たら、問答無用でぶっ飛ばしてたと思うな。私の平穏な生活を乱すのはやめてほしい。


 ……じいちゃん、どうしてそう、生温い目でこっちを見るのかな?


「果実に関しては、島のドラゴンのところで分けてもらって。あんたの分、多めに届けるようにするから」

「本当か!?」

「だから、もう二度とここに来ちゃダメよ?」

「う……この姿でも、ダメか?」

「当分はダメ」


 人の姿ならいい気もするけど、なんとなく嫌だったから。これが島のドラゴンが人の姿で遊びに来た、とかなら大歓迎なんだけどなあ。


「あ、そうだ。果実の代金代わりに、なんか素材になりそうなもの置いていってよ」

「そ、素材?」

「うん。鱗とか爪とか牙とか」


 骨も素材だけど、さすがに生きたドラゴンから骨を取り出すのはねえ。


『ドラゴンのふ――』


 それはいいから! もうそこから離れましょう! 検索先生!


 確かにいい肥料なんだろうけど、妖霊樹で十分だから!


 金ぴかドラゴンは何か考え込んでいる。


「……その、鱗や牙や爪は、ここで剥いだ方がいいのか?」

「いやいやいや! 剥がないで! 抜け落ちたやつ!! 巣とかに、ない?」

「それなら、山のようにある。……だが、あんなものでいいのか? 捨てるだけのゴミだぞ?」


 いいんだよ。人間にとっては最上級の素材なんだから。そういえば、島のドラゴンもゴミ扱いしていたなあ。


 またしても、金ぴかドラゴンが考え込んでいる。君にとってはゴミでも、私にとっては宝の山だったりするのだよ。


『やはりドラゴンの――』


 それはいいです。




 金ぴかドラゴンの巣から、島ドラゴンの巣まで素材を運び込んでくれると決まったので、明日にでも果実をたくさん届にいこうと思う。


 島ドラゴン、手間かけさせるけど、よろしく。そういえば、勝手に「島ドラゴン」って呼び始めちゃったけど、名前はあるのかね?


『ドラゴンに固有名はありません。名付けを行うと、契約行為になりますので、注意してください。自ら名乗る場合もありますが、非常に希と言えます』


 そっか、名前はないのか。勝手に呼び名をつける程度はいいけれど、正式に「名付け」になっちゃうと契約関係が発生しちゃうんだね。


 私とブランシュ、ノワールがいい例だ。なんか、難しいなあ。


 そういえば、金ぴかドラゴンは人の姿になれたけど、島ドラゴンはなれないのかな? なるとしたら、どんな感じだろう? ちょっと見たい。

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