第175話 のんびりしていたら
その日の夕飯、川魚のフライは好評でした。
「今日の夕飯はフィッシュアンドチップス~」
すごく有名な料理だけど、魚と芋のフライです。本当はジャガイモを使うんだけど、まだ収穫までは時間がかかるので、別の芋を。
デンセットで普通に売られているやつ。これを細めに切って油で揚げた。
「ふうむ。魚をこんな風に調理するのはあまり見ないのう」
「そうなの?」
「うむ。芋もな。普通はゆでるか焼くか、煮るくらいじゃなかろうか」
そうなんだー。んじゃ、今度はアヒージョでも作ってみようかな。オリーブオイルも手に入った事だしさ。
「このお魚もお芋も、とてもおいしいです!」
ジデジルがすんごいいい笑顔だ。最初、私が料理をするって言ったら「とんでもない! 今すぐ料理人を呼び寄せます!!」とか騒いでいたのにね。
何とか説き伏せ、今では普通に私が作った料理を食べています。陥落すんの、早かったよなあ。
今回の魚のフライは、衣に香草を入れて味付けしてるけど、次はタルタルソース作りに挑戦してみようかな。
禁断の、マヨネーズから作ろうかと。卵黄ならフィナンシェ作った時の残りがあるしね。
そんでフライとタルタルソースとレタスかサラダ菜でサンドイッチを作るのだ! いや、なんか唐突に食べたくなったから。
他の食材は簡単に手に入るから、ここは一つタルタルソース作りを次の課題としよう。
……課題なんて、あったっけ? まあいいや。
翌日からは、少しブランシュ達との時間を多く取る。そろそろ季節もよくなってきたし、空の散歩もいいけど、下を歩くのもいいね。
土地の穢れも大分消えてきた。そのせいか、道ばたにも名もない花が咲くようになったみたい。
「ピイイ」
「キレイ」
「そうだね、綺麗だね。少し、摘んで帰ろうか?」
亜空間収納に入れておけばしおれないし、砦に戻って花瓶に生けておけばしばらくもつでしょう。
あ、花瓶がないや。……ま、作ればいいよね。
『磁器作成の際の素材がまだ残っているので、亜空間収納内で作成が可能です』
そっか。それもあったね。じゃあ、砦に帰るまでに作っちゃおう。戻ってすぐに花が生けられるように。
道ばたの花は、どれも小ぶりなものが多い。色味も淡くて柔らかい印象のものばかり。なんか可愛いなあ。
いくつか色を合わせて摘んで、亜空間収納へ。ブランシュとノワールもそれぞれ自分達で選んで魔法で摘んだらしい。
ブランシュはグリフォンだから色々な魔法を使えるし、ノワールも飛ぶのに魔法で風を操るからね。切り口も二匹とも綺麗に切ってる。
亜空間収納内で作ってる花瓶、こっそり数を二つ増やしておいた。
ご飯食べてお菓子作って二匹と遊んで。そうしていたら、あっという間に季節は春本番になったらしい。いい陽気。
最近では、花を摘みにあちこちに行くようになった。研究が一段落してからは、じいちゃんも絨毯で一緒に来る。
それにしても、何を研究しているのやら。じいちゃん、研究中の事は絶対に教えてくれないからね。
そんなのんびりした時間を過ごしていたら、デンセットから人が来た。
「ローメニカさん。どうしたんですか?」
「最近組合に顔を出さないから、元気にしているかと思って」
そういえば、買い物はたまに行くけど、組合には全然行っていなかったなあ。お金は十分にあるから、無理して依頼受けなくてもいいし。
ローメニカさんを角塔に招き入れて、お茶を出す。本日のおやつはマドレーヌ。ちゃんとシェル型の型も作ったよ。
そろそろ生クリームを使ったケーキも食べたいなあ。
「それでね、サーリにちょっと、頼みたい事があるの。あ、ちゃんと依頼よ?」
「頼み? 依頼でもいいですけど、何ですか?」
「それが……」
ローメニカさんの話によると、デンセットから西に少しいったところにある村では、昔から養蜂が盛んなんだそうだ。
この村の出身の人は、蜂と契約出来る特殊体質の人が多く生まれるらしく、養蜂に向いている村らしい。
「ちょっと待って、ローメニカさん。蜂と契約って?」
「ああ、ここいらの養蜂用の蜂は魔獣なのよ」
「え? そうなの?」
虫も魔獣とは。あ、でも前に銀山の辺りで見つけた妖蚕も魔獣だったっけ。木だったり虫だったり、魔獣の幅広すぎ。
そのうち魚の魔獣も出てくるんじゃないの?
「それでね。その村で、蜂を狙う魔獣が出て困っているらしいの。行って討伐してきてもらえないかしら?」
「いいけど……他にも行ける人はいないの?」
「それが……蜂を狙う魔獣って、大きな熊型の魔獣なのよ」
「熊?」
つまり、相手が大きすぎるし強すぎるので、普通の冒険者には頼めないらしい。
あー、確かに熊より大きなもの、仕留めた事が何度もあるなあ。下位種ドラゴンとか。
それにしても、養蜂をやってる村かあ。今度は忘れずに蜂蜜買ってこなくちゃね。
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