第173話 フィナンシェ!

 先に島まで果実を届け、その後砦に戻る。ポイント間移動、マジ便利。


 果実を渡す時、ドラゴンに妙な顔をされたけど、もしや内心がだだ漏れていた訳じゃないよね……? 大丈夫だと思いたい。


 さて、砦に戻ってフィナンシェ制作開始。


 まずアーモンドを取り出す。一番内側の種が目当てだから、取るのが大変……って訳でもない。


 ふっふっふ、こういう時の為の魔法なのであーる。


「よしよし、順調順調」


 あっという間にボウルいっぱいの生アーモンドの完成。次はこれを細かく刻んで粉状にする。これも魔法で。


 次は卵を卵黄と卵白に分けて、卵黄は亜空間収納へ。卵白は泡立てないようにほぐしておく。


 ゴーバル産のバターから塩を抽出して無塩バターにしてから、鍋にいれて火にかける。しっかり熱を入れて焦がしていくよー。


 でも焦がしすぎはダメ。いい狐色になるまでそのまま。色よく焦げたらすぐに冷ます。鍋に焦げカスとかあるので、魔法でかすのみ抽出。


 薄力粉とアーモンド粉を一緒にふるい、卵白に砂糖、蜂蜜を入れてよく混ぜて、粉類を入れて練らないように混ぜる。


 そこに少しずつバターを入れる。混ざりにくいので、少しずつ入れては混ぜていく。


 綺麗に混ざったら、型に入れて……


「あ」


 型、作ってなかった。パウンド型は大分前に作ったのがあったけど、フィナンシェはあまり作らなかったからなあ。


 卵白消費には、ラングドシャを焼いてたんだー。周囲には不評だったけど。神子がお菓子作っちゃおかしいのかね?


 それはともかく、今はフィナンシェを焼く型だ。


「よし、作ろう!」


 じいちゃんが道具作りが得意だからか、私も影響を受けてるんだよね。何せ直弟子ですから。ないものは作る。必要なものも作る。


 今は焼き型が必要だから、作るのだ。


 あ、その前に作った生地は亜空間収納へ。時間経過がないから、生地も痛まないし、本当便利。


「まずは素材を何にするかなあ」


 パウンド型を作った時は、手持ちの素材が少なかったので、間に合わせで作ったっけ……そろそろあっちも作り直そうっと。


 こういう時は、検索先生に相談!


『お勧めはブリキですが、手持ちの素材では作成不可能です。よって、手持ちの素材で一番熱伝導率がいい魔法鋼を使いましょう。さびやすい性質がありますが、魔力を流してコーティングする事により、型ばなれがよくさびにくくなります』


 なるほどなるほど。魔法鋼は魔力鉄鉱石から作る。この鉱石、護くんを作るときに大量に採取してきたんだよね。


 そういえば、その時にノワールと出会ったんだった。ブランシュが気付いてくれなければ、今頃……


「あー、やな事は考えない! 亜空間収納で、魔力鉄鉱石を魔法鋼に製鉄完了。後は魔力でコーティングしながら形を作ればいいんだね」


 魔力鉄鉱石から、不純物を取り除いて炭素量を調整して、最後に魔力を一定量注入する。これが大事らしい。で、魔法鋼の出来上がり。


 フィナンシェは色々な型があるけど、オーソドックスなのはインゴット型。細長い四角形で、これで焼いてこそフィナンシェって気がするなあ。


 同じ形のインゴット型を、いくつも作る。型一つが小さいから、数が必要なんだ。大体二十個くらいでいいかな。コーティングもばっちり。


 ついでに、パウンド型も作っておこう。これは以前作ったのと同じサイズで。レシピの関係で、大きさが変わると困るからね。


 パウンド型はそのまま亜空間収納へ。出来たてのインゴット型には、亜空間収納から出した生地を入れる。大体、八分目くらい。


 後はオーブンで焼くだけ。高温で五分、ちょっと温度を下げて五分。


「完成ー」


 いい色に焼けたなあ。焼きたてはバターの香りがとってもいい。すっごくおいしそう。


 後は粗熱が取れたら乾燥しないように亜空間収納に入れておく。バターが馴染むまで時間がかかるから、時間経過を早めて収納。


 今日のお茶の時間にちょうどいいや。




 砦の設備も大分整って、地下空間はやる気が失せているのでちょっとお休み。畑も温室も順調。


 あれ? 私、次は何をすればいいのかな?


「ピイイピイイ」

「アソボー」


 そっか、二匹と遊ぼう。スキンシップはとってるけど、がっつり遊ぶってそうないもんね。


「じいちゃーん、ブランシュとノワールと一緒にちょっと遊んでくるー」

「気をつけて行くんじゃぞー」

「はーい」


 さて、二匹とどこへ行こう?




 で、来たのは魔大陸。何故かって? ノワールが行きたがったから。


「ココガ、魔大陸ナノ?」

「そうだよ。邪神がいた時はもっと酷い場所だったけど、完全浄化したら、こんなに綺麗な場所になったんだ」

「ピイ」

「うん、綺麗だよね」


 本当に、魔大陸は綺麗だと思う。霞がかった風景の中に、森と草原が広がってる。


 なだらかな丘の向こうには、高くそびえる山。山頂には、まだ雪が残っていた。


 あの丘の向こう、山の裾には、神馬とドラゴンの大好物の果実がなる木がある。それに、アーモンドの木もね。


 探したら、オリーブの木とかないかな? オイルが欲しい。


『あります』


 ああ、あるんですね、検索先生……なんか、本当何でもありだな、魔大陸。

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