第170話 もっと早く言ってよー
「それとな、ゴーバル地方のその後を、少し説明しておこうと思ったのだよ」
おや? 確かにあの地方の裏側を暴いちゃったのは私とじいちゃんだけど、一介の冒険者にそこまで説明する必要、あるのかな?
じいちゃんを見ると、特に拒否している訳じゃないから、いいのか。
「二人のおかげで、フート村の不正がわかったからな。現在詳細な罪状を確かめている最中だ」
罪状か……
『罪状とは――』
いいから! そこはいいから検索先生! 大丈夫、わかってます!
なんか、検索先生からさみしそうな雰囲気が漂ってくるんだけど……これ、スイッチのオンオフとかないのかな……助かる時のが多いけどさ。
『設定から、助言のオンオフを行えます』
あるの!? てか、検索先生の設定ってどこ!?
『冗談です』
先生……なんか、どんどん人間臭くなってますけど、大丈夫?
『問題ありません』
そうなんだ……
話は戻して、領主様の説明では、少なくともフート村は解体する方向だという。
「村長も老齢を理由に若者の暴走を止められなかったしね。妥当な結果だろう」
あの魔獣を使って他の村の羊を襲わせるって計画、村のほぼ全ての家が関わっていたらしいよ。何やってんだか。
フート村の人達は、村解体後遠い未開発地域の開拓に行かされるんだって。荒れ地を一から開拓するのは、とても大変な事らしい。
大変かなあ? ……あ、魔法がなければ大変か。あの村に魔力持ちはいなかったし、そもそも教えてもらえなければ、魔力は使いこなせないしね。
大変だからこそ、罰になるって訳か。納得していたら、隣でじいちゃんが領主様に質問した。
「領主殿、実行犯達はどうなるのかのう? そいつらも、開拓行きでは、ちと温いのではなかろうか?」
「発案した者と実行した者共は、全員鉱山送りと決まっているよ。死ぬまで過酷な労働からは逃げられない。幸い、二人のおかげで我が領には新しい鉱山がいくつか見つかっているから、送り先には困らんし」
あー……見つけたね、いくつか。でも、あれらの掘削にはじいちゃんの土人形を使うって事になってなかったっけ?
ちらりとじいちゃんを見ると、肩をすくめていた。
「ちなみに、バム殿との契約はなくなったりせんよ」
「え? そうなの?」
ついいつものように口に出したら、剣持ちさんに睨まれた。おっといけない。不敬だって、罰されちゃう。身分社会って、本当窮屈。
でも、領主様はからからと笑って不問にしてくれた。
「人形には頑張って穴を掘ってもらうが、そこから土を出したり補強したり採掘したものを運んだりと、重労働はそれこそ山程あるのだよ」
……やろうと思えば、その辺りも全部土人形にやらせる事も出来るけど、多分それやると、監督する人の魔力が危なくなるんだろうなあ。
土人形の動力源は別口に出来るけど、命令するにも少しだけ魔力が必要になるから。
山一つに一人……というより、坑道一つに一人くらいは必要なのかな。魔法士並の魔力があれば、一山一人でもいけるかも?
そういえば、あの「ドリル」発言した魔法士の人、どうしてるかな……
「強制労働など、生ぬるい!」
お? 銀髪陛下がなんか怒ってる。
「輸出品をなんだと思っているんだ、あの連中は」
いやー、なんとも思っていないと思うよ? たくさん領主様に納めれば、その分たくさんの物資をもらえるとしか考えてないんじゃないかなー?
「それにしたって、勝手に他の村の羊を襲わせるなど、正気とは思えん」
だからー、何も考えてないんだって。これがバレたら自分達がどうなるかー? とかも、何にも。ただ、目先の物資に目が行ってるだけで。
「しかし……いや、そんなものなのか?」
「あんな小さな村じゃあ、教育も殆どされていないだろうし、多分そんな感じかなーっと」
あれ? なんか、皆の視線が集中しているんだけど?
「あの……何か?」
「何か、ではない。先程の言葉は、どういう事だ?」
先程の言葉? 銀髪陛下ってば何を言って……あ。
「もしかして、全部口に出してました?」
みんなが頷く。マジでー? もっと早く教えてよー……
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