第169話 やったー!
「で、出来た……」
買ってきたミルクから生クリームを抽出し、半量を振って振って振って振って、出来た塊を絞ってバターの完成。塩を入れていないので、無塩。
残りはそのまま使ったりホイップして使う予定。簡単なケーキなら、スコップケーキかなあ?
スポンジケーキを焼くのが難しいけど、ナッペがいらないし、簡単と言えば簡単。
あ、栗もほしいなあ。季節じゃないけど。ここらって、栗は育てられるのかなあ?
『ダガード国内では自生していません。また、こちらの気候では栽培は難しいかと思われます』
検索先生、ありがとう。やっぱり、もうちょっと南でないと無理かな……ここで作るとしたら、温室か。
栗はお菓子にもおこわにも使うので、欲しいな。よし、ちょっと頑張ってみるか。
という訳で、温室に来てみた。そういえば、苗を植えてからこっち放りっぱなしだったなあ。
お世話はじいちゃんの土人形がやってくれるので安心なんだけど。さて、どうなってるかな?
「おおお」
なんか、凄く育ってる! あれ? まだ苗を植えてからそんなに経ってないよね?
『温室内の温度湿度調整と、肥料がいいので育成が進んでいます』
あ、そうなんですねー。肥料ってあれか。妖霊樹の枝を細かくしたやつか。魔獣由来の肥料は効果絶大だなあ。
『一番の肥料はドラゴンのふ――』
「ちょっと待ったああああ!」
その先は言わなくていいです! 先生。そんな事頼んだら、今度こそドラゴンから島への出入り禁止を食らっちゃうよ。
今も定期的に……というか、二、三日に一度は果実を届けに行ってる。ポイント間移動でちょちょいと行けるので、全く苦ではないんだけど。
でも、そんなものちょうだいって言ったら、きっとドン引きされるよ。私だったらドン引きする。
という訳で、妖霊樹の肥料で十分です。これで味が良ければなおよし。
『最高の味を目指すのであれば、やはりドラ――』
「いいですそれは忘れましょう!」
最近、検索先生がよくわからなくなってきた……
試しに実が赤くなり始めているイチゴを食べてみた。うん、甘くておいしい!
他のフルーツも、少しずつ収穫してみる。後で食後のデザートに出そうっと。
砂糖の木も、順調に実をつけてるね。これは実を細かく砕いて絞り、その絞り汁を精製すると砂糖になるんだよなー。
砂糖はうちで消費する程度を作る予定なので、精製は魔法でちょちょいとやってしまおう。これも楽しみ。
今手持ちの砂糖は、違う大陸で仕入れておいた分。向こうは砂糖の木の栽培が盛んらしい。
ダガード国内でも砂糖は出回ってるけど、やっぱり高いから一般家庭ではあまり手が出せない。高級調味料だね。
ラウェニア大陸でもくびれの辺りでは砂糖の木を栽培しているらしき話は聞いたけど、土壌の違いか出来はいまいちなんだとか。
向こうの大陸との貿易がうまくいくようになれば、もう少し値段も下がるかもね。でも、輸送費が上乗せされるから、やっぱり高いままかも。
蜂蜜があって良かったよ。こっちの蜂蜜は、魔獣分類のオオミツバチが作るそうな。
魔獣なんだけど、花畑と巣箱を人間が用意してやると、蜂蜜を分けてくれるようになるんだって。
ここらの土地だと花を咲かせるのも一苦労らしいけど、痩せた土地でも作れるガガイモって芋があるそうで、その花で蜂蜜を作ってるんだとさ。
砦でののんびりした生活を送っていたら、何やら第三区域の辺りが騒がしい。誰か来たみたい。
「誰だろう?」
護くんに来客の映像を見せてもらったら、領主様と剣持ちさん、それに銀髪陛下が揃ってる。
あー、これ、入れない訳にはいかないメンツだ。
「……いらっしゃいませー」
口ではそう言うけど、決して歓迎はしていません。領主様はまだしも、剣持ちさんと銀髪陛下がくっついてくるのがなあ。
「おお、久しいなサーリよ。バムも壮健そうで何よりじゃ」
「領主殿もご機嫌麗しゅう」
「もちろん麗しいとも! 主ら二人のおかげでのう」
領主様はくふくふと笑っている。本当に機嫌がいいみたい。まあ、このところコーキアン領は新旧ともに景気のいい話が多いからね。
旧ウーズベル領である新領地には銀山とダイヤモンド山があるし、元々の領地の南側にも金山が見つかってる。
これらはいい収入になるからねえ。しかも、じいちゃんの土人形を使って本来なら掘り進められないような深い場所まで掘る事が出来るというね。
これで領主様が眉間に皺を寄せていたら、何事って思うよ。
そして、眉間に皺を寄せているのは銀髪陛下の方だったりする。あれえ? コーキアン領が豊かになれば、国自体も潤うはずなんだけど。
何せ鉱山には国から税金をかける事が出来るからねー。この辺りは、フォックさんが色々教えてくれた。
「それで、おそろいで今日はどうしたんですか?」
「うむ。まずはゴーバル地方の事、大儀であった」
あれ、これ「ははー」って言う場面? 思わずじいちゃんを見ちゃったけど、特にリアクションはしなくていいらしい。
領主様は、こちらを見てにやりと笑った。
「フォックから聞いておるぞ。何でも、ゴーバル地方のチーズとバターが欲しいそうじゃな? 今日はそれらを持ってきたぞ」
「え? 本当ですか!?」
やだ、領主様いい人!
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