第151話 叱られました

 砦に戻って、山で羽根あり馬達に出くわした事をじいちゃんに報告したら、怒られました……


「お主の好き嫌いだけで、相手を吹き飛ばすとは何事か!」


 えー? だって、あいつら生まれたばかりのノワールを、ただ「黒いから」ってだけで捨てたんだよ!?


「だからといって、種族名まで変えるやつがおるか」

「へ? 何それ?」

「お主、天馬族の名を書き換えておるぞ? いつもの検索で調べてみい」


 本当? 検索先生、教えて!


『神が神子の言葉を聞き入れ、世界の理を上書きしました』


 マジでー!? ヤバ! とんでもない事しちゃった!!


 青くなってると、じいちゃんがぽんと肩を叩く。


「今からでも、元に戻すよう神に祈ってはどうかのう?」

「う、うん」


 神様、お願いします!! 私が悪うございました! どうか連中の種族名を元に戻してください! 天罰ならちゃんと受けます!


『神子の願いが聞き入れられました。種族名羽根あり馬は、元の天馬に書き換えられます』


 よ、良かった……


 にしても、いきなりどうしたんだろう? 今までも結構あれこれこの世界について文句言っていたけど、こんな事は一度もなかったのに。


『邪神の浄化に加え、北ラウェニア大陸の浄化が進んだ事により、世界への神の干渉力が上がっています。その結果、神子の願いを聞き入れる余裕が出来たのかと』


 なんと。いやいやいや、神様お願いします。私ごときのぼやきを、そう簡単に聞き入れないでいただきたい。


 しかも、手順も踏まずに勢いで言った事なんて。大変恐れ多い事ですが、そういった事はきちんと手順を踏んだ場合にのみ、発動してくださいお願いします!


『……神子の願いが聞き入れられました。今後、世界の理を書き換えるのは、神子が祭壇で祈りを捧げた時のみとします』


 よ、良かったああああ! これで一安心。あ、後は天罰か。あんまり痛くないものだといいなあ。


『今回に限って、邪神の完全浄化のご褒美とし、天罰は下さないものとします』

「本当に!?」

「な、何じゃいきなり?」

「神様が色々聞き入れてくれたって! で、やらかした罰も、今回は免除してくれるって!!」

「……良かったのう」

「うん!」


 いや、本当。神様ありがとう!!




 神様の方は一段落しても、じいちゃんの方は終わってませんでした。


「そもそも、天馬達の世界では、黒い子供は長生き出来んのじゃろう。敵にも狙われやすくなるだろうしのう」

「あ……」

「やつらがそうするにも、それなりの理由があるんじゃよ」

「そっか……」

「それに、やつらがノワールを捨てたからこそ、今お主の側にいるんじゃから、かえって感謝してもいいのではないか?」

「うーん……それはそれ、これはこれ。でも、そっか……」


 個人の好き嫌いだけで、吹っ飛ばしたのは悪かったし、羽根あり馬扱いしちゃいけなかったな……反省。


 しかも、知らない間に種族名まで書き換えられてたなんて。うん、本当にごめん。


 でも、もう二度と私の視界に入らないでいただきたい!


「また見つけたら、魔大陸にでも行ってもらおうかな?」

「それはいいが……天馬達だけでは、あの大陸に辿り着けんじゃろ」

「そうなの?」


 何でも、天馬達は一度に飛べる時間が限られてるんだって。どんなに頑張っても三時間がせいぜいらしいよ。


 天馬の飛ぶスピードと時間を考えると、確かに北ラウェニア大陸の端から飛んでも、魔大陸に辿り着く前に海に落ちるね……


「んじゃあ、今度見つけたら私が魔大陸の南端まで送ってあげよう」

「……ほどほどにの」


 やだなあ、何言ってんの? じいちゃんってば。親切心で言ってるんだよ? ただ、ポイント間移動のような穏便な手段じゃないってだけで。


 だって、あいつらの事はやっぱり許せそうにないから。でも邪険にはしないし、名前にもいちゃもんはつけない。

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