第150話 やな連中に会いました
畑も温室も順調。となれば、そろそろじいちゃんの研究室に手を付けようかと思ったんだけど……
「今のところ、わしの方はいいから地下室に手を入れてはどうかの?」
「え? いいの?」
「うむ。領主殿からの仕事が舞い込んだでな」
あー、あれかー。じいちゃんの土人形は、核さえ作っちゃえば、材料はそこらにある土でいいもんね。
という訳で、しばらくはその核作りをするから、研究室はいらないそうな。そっかー。じゃあ、地下室を整えておこうかな。
元々、地下室は物置や貯蔵庫に使うものなんだけど、私の場合亜空間収納があるかねー。
なので、地下室は完全にお遊びの場にする事にしている。外から絶対に見えないってのも、いいよね。
入り口は隠してあるから、誰が来てもわからないし。現に銀髪陛下も領主様も見つけられなかったしね。
角塔の一階のある部分に立って、魔力を流す。すると、床に紋様が現れて一瞬で地下空間へ。
本当は普通の階段にしておいたんだけど、最終的にそこを塞いでこの形にしたんだよねー。
何ならポイントを打ってあるので、ポイント間移動も出来るんだ。まあ、それを使うのはよっぽどの緊急時だと思ってる。
一応、地下には湖まで続く洞窟へのルートがあるから、そこから緊急脱出出来るようにしてある。
といっても、そんな緊急時はそう来ないと思うけど。
「さて、何を置こうかな。やっぱり、遊具は欲しいよね」
暇になったら遊ぶ為のもの。体を鍛えるのに、フィットネスマシンみたいなのもいいかも。
下にマットみたいなのを敷き詰めた空間もいいねえ。ごろごろ出来そう。うーん、どうしたものか。
しばらく考えて、地下空間の岩肌を見ていたら、途端に閃いた。
「そうだ! 遊園地!」
ジェットコースターでこんな洞窟の中を行くアトラクション、あったよね。あれを再現してみるのはどうだろう。
いつでも乗れるジェットコースター。飽きたらコースを変えたり、アトラクションの形そのものを変えちゃえばいいや。
となったら、まずは空間拡張から。それと、アトラクションの種類を考えよう。
じいちゃんに頼んで、綺麗な人形を動かせないかな? 人形に物語を演じさせて、その中を通るとストーリーがわかるってやつ。よくあるよね?
目玉はジェットコースターだけど、怪しい洞窟の中をどこまでも行く、ってコンセプトでいいかな。
何か、楽しくなってきた。亜空間収納の中にある素材だけだとちょっと足りないから、またノワールと出会った山まで採取に行こう。
「ブランシュ、ノワール、ノワールと出会った山まで行くけど、来る?」
「ピイイ」
「行クー」
砦内では、いつものサイズの二匹だけど、もうかなり大きくなってるから、ほうきで一緒に飛べるのが嬉しい。
いつも朝は一緒に飛んでるけど、あの山は特別な場所だからなー。
よし、では二匹と一緒に行ってこよう。じいちゃんに一言告げて、出発。
山は相変わらずな感じ。ここもコーキアン領なんだけど、こっちの調査は依頼されてないんだよねえ。
あ、この後妖霊樹の谷にも行って、少し狩ってこよう。木材が必要だから。
二匹と一緒に山であれこれ採取していたら、何か近づいてくる気配がある。地図にばっちり表示されてるから、すぐにわかるんだ。
何だろう?
「お前達、何しにこの山に来た!?」
うお! 羽根の生えた馬、天馬の群れだ! 大人なせいか、ノワールよりも流暢に喋ってる。
その天馬の群れが、私に何の用だろう? 山に来たって、ここはあんた達のものじゃないのに。勝手に縄張りにしてるのかな?
「見よ、あの黒いもの」
「あれは、堕天の印!」
「そういえば、冬になる前、ここに堕天の子を置いて行かなかったか?」
「まさか! あのまま命を落としたと思ったのに!」
……今の天馬達の言葉からすると、ノワールの親がこの中にいるって事?
生まれたばかりのノワールを、生きていけないとわかっていてここに置き去りにした。
許さん。
「吹っ飛べえええええ!!」
天馬に風はあまり利かないけど、暴風クラスなら十分有効らしい。渦を巻いてるから、巻き込まれて飛んでいったよ。
ついでに、「天馬」なんて名前も改名しちゃえ。「羽根あり馬」程度でいいよもう。
邪魔は入ったけど、その後必要なものを採取して、妖霊樹も狩ってから帰った。
そういえば、こっちの妖霊樹には妖蚕がついていないんだよね。どうしてだろ?
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