第152話 知らなかった

 妖霊樹は、実は加工しづらいんだと初めてしりました……


「え? 妖霊樹の木材!? そんな加工のしづらい高級素材を使ってるの……?」

「え? そうなの?」


 本日、ローメニカさんが来ています。領主様から銀鉱脈とダイヤの鉱脈を見つけた報償金の件で。


 額が額なので、組合の口座を利用しないかというお勧めだったんだけど、亜空間収納があるからなあ。


 でも、「砦に金がある」とか噂が回ると、また面倒臭い連中が押し寄せてくるかもしれないしねえ。


 ちなみに、口座を使う事は組合にも領主様にもメリットはあるそうな。現金の移動って、色々大変だそうだよ。


「それか、サーリが領主様のところへ引き取りに行くか」

「うーん。それでもいいんだけど……」


 何せ、じいちゃんが近く掘削用の土人形を納品に行くからね。あ、その前に試し掘りか。


 山まで領主様が来るなら、そのついでにもらいに行こうかな?


「それにしても、扉まで妖霊樹の木材だったなんて……」

「そのテーブルも、椅子もそうですよ?」

「え!? ……デンセットの家具職人が泣き出しそうね」


 それは、どういう意味だろう? 確かに亜空間収納内で魔法を使って制作しているから、職人技にはほど遠いと思うけど。


 あれだ。例えるなら私の作るのは機械で作る大量生産品。職人が作るのは一点物のオーダーメイド。そんな感じ。


 でも、細かいところまでこだわってるから、魔法で作ったにしてはいい線いってると思うんだけどなあ。


 それをローメニカさんに言ったら、「違う……」って力なく言われちゃったんだけど。何で?


「とにかく、口座の件は考えておいてね」

「はーい」


 でもなあ。組合の口座って、デンセットでしか使えないっぽいから、今ひとつな感じ。


 魔法でネットワークを作って、せめて国内のどの街でもお金が下ろせるようになっていたら、利用したんだけど。


 誰か作ってくれないかな? 自分ではやる気にならないから。じいちゃんも、その手の面倒臭いのは嫌いだしなあ。


 あの人、自分が興味向いたものしか作らないから。腕はいいのに。




 今日はせっせと木材つくり。これでジェットコースターとか回転木馬とか回転ブランコとか作るんだー。


 他には何がいいかな……あ、幻影の魔法とか使った、体感アトラクションとかどうかな。ドラゴンの背に乗って空を飛ぶ疑似体験が出来ます、とかいうやつ。


 でも、私自身はほうきで空飛ぶしなあ……それ言ったら、この遊園地、誰が遊ぶんだって話。


 いや、正気に戻っちゃ駄目だ。作るのが楽しいんだ。あ、ジップラインは好きだから、あれは作ろう。


 だったら、やっぱり景色は欲しいなあ。どこかで撮影してくるか。山なら、今度試し掘りに行く山でもいいかなー。


 いっそ、海にしようか。北の海も、これから夏になるから色も良くなるし。冬の海は、なんと言うか、色がよろしくないからね……


 色々考えながらだと、木材加工も楽しいなあ。拡張した空間をぐるりと回るトロッコ列車も作ろうかな。見える景色もその時の気分で変えられるよう、いくつか用意して。


 他にも、何かないか考えておこうっと。




 夕方、夕食の仕度の前に、みんなで空のお散歩。最初は一人で飛んでたんだけど、二匹がついてくるようになって、じいちゃんも絨毯で参加し始めた。


 で、結局みんな行くようになった。なので、最近空の散歩は朝夕の二回になってる。


 空の散歩は、私にとってもう一つのやるべき事をする場になっている。少し高い場所までいって、浄化の力を振りまく。


 薄くても、遠くまで確実に届くように。本当は、北ラウェニア中を移動しながら浄化した方がいいんだろうけど、今は砦から出る気はないし。


 あー、次の冬は、北ラウェニアに浄化の力を振りまきながら、飛行船でぐるぐる回ろうか。飛行船の中は暖かいし。


 でもなー。まだ行っていない場所にも惹かれるんだよなー。浄化は私がいれば、少しずつでも効果は出るし。


 まあ、これから本格的な春になって、夏秋ときて冬だから、それまでに決めればいいや。

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