第147話 畑を作ろう

 しばらく仕事しなくても食うに困る事はないので、まだ砦修繕に全力を尽くそうと思う。


 あ、ダイヤモンド掘削に関する道具、じいちゃんに聞いてみたら、採掘されたダイヤの売り上げの二割で手を打つそうな。


 どのくらいの額になるかは知らないけど、それで交渉しておこう。


「何、交渉の席にはわしも行くでな」

「そうなの?」

「お主一人では心許ない」

「どういう意味!?」


 少しは弟子を信用しようよ。




 報告アンド交渉は明日以降として、本日は第三区域の畑部分に手を入れようと思う。


 長い事放置されていたせいか、砦の土地は痩せてる。ここに肥料を入れて、作物を作れるようにしたいところ。


 とはいえ、自分達が食べる分くらいなので、そこまで大々的にするつもりはない。何せ畑の世話は、じいちゃんの土人形に頼るつもりだしね。


 では、まずは検索先生に相談。


『畑の肥料には色々ありますが、手持ちで一番向いているのは妖霊樹の葉と枝です。細かく砕いて畑に蒔きましょう』


 へー、妖霊樹の葉と枝って、肥料になるんだー。木材を作った時に大量に出てるから、亜空間倉庫に寝かせっぱなしだったよ。


 まずは畑にする区域を決めて、それから亜空間収納内にある妖霊樹の葉と枝を粉砕。


 畑部分を耕して粉砕したものを蒔き、さらに耕す。全部魔法。


「ほう。妖霊樹は肥料にもなるんかの?」

「そうらしいよ……って、いつの間にいたの、じいちゃん」

「さっきからいたわい」


 本当かな……まあいいや。いつの間にかブランシュとノワールも側にいたので、二人と二匹で畑が出来上がっていく様を見ている。


 って言っても、土がぼこぼこ盛り上がったりなだらかになったりしていくだけなんだけどねー。


 さて、畑の用意は出来た。ここで作るのは何かと言えば……


「まずは大豆、それとトウモロコシ、トマト、ジャガイモ。あとは……」

「聞いた事のない作物ばかりじゃな」

「うん、私がいた国でよく食べられていた野菜なんだ」


 あ、トウモロコシは穀物だっけ。まあいいや。


 大豆は枝豆が食べたいのもあるんだけど、何より味噌と醤油作りの為。この世界、何故か大豆はないんだよね。あ、小豆もなかった。作らなきゃ。


 ないものをどうやって育てるかというと、何と魔法で種を作るのだ。何もないところからはさすがに無理なので、近い野菜や豆類から作る。


 それなんて遺伝子操作? って思うけど、検索先生から待ったがかからないのでいいのだ。それどころか、作り方を教えてくれるからね。


 これはやれと言われているようなものでしょう! なので、胸を張ってつくるのだ。


 畑には、すっぽりかぶせるタイプの結界を張っておく。鳥や虫対策です。受粉はじいちゃんお手製の蜂型土人形を使うのだ。虫嫌い。


 雑草の根も耕す際に粉砕したから、これで雑草が芽を出す心配もなし。草むしりって大変そうだし。でも多分、やるのはじいちゃんの土人形。


 ちょっと過保護かなー? とも思うけど、まずはやってみようかなって。実験って、大事よね。


 こっちにはピーマンらしきものやナスらしき野菜、キャベツらしきものもあるんだけど、味がちょっと違う。


 なので、そのうちそれらも作ってみようかなー。まあ、まずはここに植えたものがうまく育ちますように。


 さて、次は温室かな?




 温室の室内は、見た目より広い。うん、空間拡張使ってるんだ。やっぱり、果物とかはこっちでたくさん作りたいじゃない?


 まずはコーヒーと砂糖の木、それとイチゴとバナナとパイナップルを植えた。


 リンゴはこっちにも似たような果実があるし、オレンジ系も幅広くある。ただ、ダガードにはあるかなあ……後で調べてみようっと。


 ちょっと離れた街でも、売っているなら買いに行けばいいしね。空を行くのは楽です。亜空間収納に入れておけば腐らないし。


 そうだ、ミルクを買ってヨーグルトも作ろうと思っていたんだ。朝に欲しいよね。定番定番。


 蜂蜜はダガードでは手軽に手に入る。割とそこかしこで養蜂をやってるらしいんだ。村単位とかね。


 で、生産地で味が違うという。デンセットにも近くで三つくらい養蜂をやってる村があるそうで、よく蜂蜜売りに来てるよ。


 いくつかは、既に亜空間収納に入ってる。料理にもお菓子にも使えるから、便利便利。


 その分、ここらだと砂糖が高値だね。輸入に頼るほかないから。ラウェニア大陸だと、くびれの辺りが一大生産地らしいよ。


 気候的に、そこから少しでもはずれると砂糖の木の栽培に向かないんだってさ。そういや、コノソンも緯度的にはくびれ辺りだったわ。


 砦も大分過ごしやすくなってきた。後は地下空間とじいちゃんの研究施設と、来客用の棟に手を入れるくらいかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る