第146話 結果報告

 妖霊樹を上から見ていたら、何か動いてるものがある。何あれ?


『妖蚕の幼虫です。妖蚕の繭から採れる糸は妖絹糸と呼ばれ、珍重されています』


 マジで? って事は、あの動いてるのは全部虫……上昇上昇!!


 虫は駄目。虫はイヤ。虫は嫌い。たとえ綺麗な糸を作るとしても、虫は駄目イヤ嫌い。


 気を落ち着けて、もう一回辺りの山々を検索。石炭と銀以外には何もないかなあ?


 少し深い部分も探ってみようか……お? ダイヤじゃね? これ。しかも、結構埋蔵量あるような……


『掘削に手間はかかりますが、間違いなく北ラウェニア大陸一のダイヤモンド鉱山です』


 おおー! 何かでかいお宝の山を引き当てたよ? でも、手掘りであの深さまで到達するの、大変そうねー。


 もしかしたら、じいちゃんが大もうけ出来そうな気配。とりあえず、調査はこのくらいで帰ろうかね。




 デンセットに帰って、組合に到着すると、当たり前のようにローメニカさんに捕獲されて組合長室へ。もうこの流れ、通常なんだね……


「一応確認だが、もう行って帰ってきたのか?」

「うん、当然」


 何を当たり前な事を言ってるのやら。そして頭を抱えて深い溜息を吐くのは、やめてもらえませんかね?


「領主様には、こちらから報告しておく。見つけたものを、書き出してくれ」

「はーい」


 調査結果を渡された板に書いていく。羊皮紙とか、高すぎて組み合いじゃあ使えないらしいよ。


 じいちゃんに、紙は出すなって言われてるから、ここで出すような事はしない。


 板に銀鉱脈と妖霊樹、妖蚕の事も書く。ダイヤの事は、じいちゃんに確認を取ってから、領主様に直に交渉したいなあ。


「フォックさん。ちょっとじいちゃんに確認取ってから、領主様と直接話したい事があるんだけど」

「自分で報告するって事か? そこにバムさんがどう関係するのかわからんが……一応、報告は組合経由でって事になってるぞ?」

「一部だけなの。で、じいちゃんに聞かないと、話していい事かどうかがわからなくて」


 じいちゃんの作り出す道具なら、確実にあの深さのダイヤでも掘り出せるはず。でも、本人が作る気にならないと、どうしようもないからね。


「まあ、お前さんがそうしたいのなら、こちらとしては問題ないが」

「じゃあ、そういう事で」

「あ、おい! 待て待て待て」


 えー? まだ何かあるの? 不満そうにフォックさんを見たら、何だかがっくりと肩を落としている。


「依頼が終わったんだから、依頼料を受け取っていけ」

「あ」


 忘れてた。




 正直、向こうの大陸でもちょこちょこ稼いでいたから、お金には困っていないんだよなあ。


 今回の依頼も、依頼料聞かないで飛び出したし。フォックさん達から、あり得ない事だからって笑われちゃったよ。


 調査結果が結果だから、今回の依頼料には上乗せがされる可能性があるってさ。


 だったら、後で上乗せ分と一緒にくれるのでもいいって言ったんだけど。


「お前、そう言って受け取りに来るのを忘れそうだから」


 おかしいなあ。そんな事はないんだけど。


 結局、今回の基本的な依頼料を受け取った。その額二百万ブール。え? ちょっと調査してきただけで、こんなにもらえるの?


 慌ててたら、フォックさんからまた笑われた。


「普通は調査地域まで行くのにも危険が伴うし、簡単に行って帰ってくるなんて出来ないんだよ。その料金の中には、旅費や危険な仕事に対する手当も含まれてるんだ」


 あーなるほどー。私はほうきで楽に行き来出来るけど、陸路を使ったら片道だけでも結構な時間がかかるんだっけ。


 しかも、街道は魔獣に襲われる危険や、盗賊に襲撃される危険もある。もっとも、一人で街道を行く旅人を襲う盗賊は少ないけど。


 連中が狙うのは、荷物やお金をたっぷりもっている商人達だ。


 ともかく、本来なら時間も手間もかかる仕事だから、この金額が依頼料として設定されたらしい。


 で、後で上乗せ料金がくるというんだから、おいしい仕事だよなあ。いや、普通は命と引き換えにする仕事らしいけど。

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