第145話 調査調査

 朝の散歩と朝食を終えて、デンセットの組合へ。散歩はみんなで行ってる。じいちゃんは自前の絨毯で。


 ブランシュもノワールも、この冬を越えた事で大分大きくなってる。ノワールなんて、もう普通の馬より大きいよ。


 ただ、砦にいる時はいつもの中型犬くらいの大きさでいる。本人? もその方が楽なんだって。


 でも、飛ぶときは本来の大きさになってる。大きくなったからか、飛ぶスピードも凄く速い。じいちゃんなんか、毎度置いて行かれる程だよ。


 私も油断してると、置いてかれそう。でも! まだまだ負けないからね!


 ブランシュもかなり大きくなってるけど、親グリフォンの大きさを考えると、これからまだ大きくなるんだと思う。


 じいちゃん曰く「グリフォンは成長がゆっくり」なんだって。幻獣の中でも、長く親元にいる事で有名なんだとか。そうなの?


 天馬が大体半年以内に親離れするのに比べて、グリフォンは親元に三~五年いるのが普通らしい。


 という事は、ノワールはもう親離れしていてもおかしくなくて、ブランシュはまだまだだって事か。


 でも、ノワールは生まれてすぐに親から捨てられてるから、既に親離れしてる状態だよね。うん、だから私の側からいなくなる事はないのだ。


 そして、二匹ともデンセットには飽きてるのか、付いてきてはくれない。うう。


 いつも通り門番さんと挨拶を交わし、街中に入って組合に行く。カウンターに近寄ったら、脇から来たローメニカさんに、満面の笑みで捕獲された。


 そのまま組合長室へ。毎度の流れに、誰も注意を向けない。最初は「何だアレ?」って感じで注目を集めちゃってたのに。


 注目されるのも嫌だけど、こうも「ああ、いつもの事ね」って感じで無視されるのも、それはそれで何か嫌。


 組合長室に行ったら。フォックさんが珍しく満面の笑みだ。どうしたの? 何か悪いものでも食べた?


「どういう意味だ? それは」

「あれ? 口に出てた?」

「しっかりとな」


 おかしいなあ。まあいっか。


「領主様からの依頼を受けにきましたー」

「ああ、聞いてる。こっちが、ウーズベルの地図だ。で、調べてほしい地域はこの辺り」


 そう言って出された地図は、はっきりいって大分粗い。この辺りってのも、アバウトだし。


 後で検索先生に補完してもらって、地図に落とし込んでおこうっと。


「いつくらいに行けそうだ?」

「え? これからすぐに行ってくるよ? いつ終わるかは、ちょっとわからないけど」


 何せ範囲が広いからね。前みたいに山脈一帯のみって訳じゃないから。


「そうか……そりゃサーリだもんな……」

「心配する方が間違ってますよね……」


 あのー、なんでそんな遠い目をして言うのかな?




 デンセットを出て、そのままほうきで旧ウーズベル領へ。ここは今や、コーキアン領ウーズベル地方だ。


 貴族にとっては、コーキアン辺境伯がさらに力をつけるって事で、色々思うところがあるんだろうけど、住んでる人にとっては、ちょっと住所が変わる程度の問題なんだろうなあ。


 これで税金が上がったとか、住みにくくなったとかだったら問題だけど。あの領主様なら、その辺りはうまくやるんじゃないかなー。


 さて、調べる場所はウーズベル地方でも東の方。東隣との領境辺りだ。山が連なる山脈で、その谷間にはちょっとだけど平地がある。


 あそこは開拓候補地じゃないんだろうなあ。候補地は、山脈の裾の方。かなり広い森林地帯で、北の方だからか針葉樹林が多いね。


 これ、木材になるのかな……まあいいや。人が住むなら水が必要。川は……あるね。


 魔道具の中には、水を浄化するものもあるから、川から引いた水でも飲めるようになる。


 ただあの道具、教会の専売なんだよねえ……その辺りは、領主様が考えるから、いいのか。


 山の資源はどうだろうね? 検索先生に頼んで、山脈そのものを調べてもらった。


「お? 石炭?」


 はて、困ったものが出てきちゃったよ? 石炭って、確か化石燃料の一つだよね? この世界では、まだ化石燃料は使っていない。


 火力出したい時は、魔法を使った方が早いし環境にもいいから。うーん、でも、北の燃料としては、冬場の暖房用にあった方がいいのかなあ?


 どう思います? 検索先生。


『この世界で、化石燃料はまだ早いという意見が出ました』


 ……どこからの、誰の意見? 返答なしという事は、聞いちゃいけない事なんですねわかりました。


 他には、銀鉱脈があるそうなので、そっちを報告しておこう。あと、ここにもいたよ、妖霊樹。こいつは最高級木材になるので、報告報告。


 いつかの谷といい、ここの谷といい、妖霊樹が好む谷があるのかな? あるんだろうなあ。

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