第142話 ずるい!

 二人がかり……途中からローメニカさんも加わったので、三人がかりでの説教は、心に響きすぎてヒビが入りました……


「わかったのか? サーリ」

「だから、危険な事は何もないって、何度も言ってるのにいい」

「まだ言うか!」


 さっきから、ずっとこの調子。本当、フォックさん達が心配するような危険な事は、何もないってば。


 行った先々でも盗賊捕まえて感謝されたり、こっそり海賊退治して、ついでに腐った貴族を懲らしめたりしただけなのに。


 でも、それを言ったらまた説教の嵐……もう、勘弁してえええ。


 ぐったりソファに倒れ込んでいたら、いつの間にかキッチンでお茶を入れてくれていたローメニカさんが、デンセットで売っている焼き菓子と一緒に出してくれた。


「そこらへんにしませんか? あんまり口うるさく言うと、サーリに嫌われますよ?」

「いや、だけどなあ」

「そこまで。フェリファー様も、よろしいですね?」

「ああ。私があまり言うと、陛下がへそを曲げる。後は陛下にお譲りしよう」


 え……何か今、変な事を言いませんでしたか? この剣持ちさん。陛下がどうとか。


 まさか、銀髪陛下まで説教に加わる気じゃないでしょうね?


 私を見たローメニカさんが苦笑しつつ、全員にお茶を配った。


「さあ、その話はそれくらいで。サーリ、旅先の話をしてくれない?」

「へ? いいですけど……どこからいきますか?」

「もちろん、最初から」


 最初っていうと、作ったはいいけど結局使わずじまいだった拠点の話からかな?


 とりあえず、大陸に到着した辺りから話し始めた。




 全部話すのに、かなり時間がかかっちゃったな。もう外は暗いよ。春とはいえまだ冬の名残が残る頃。ダガードでは日がまだ短いのだ。


「もう外、暗いですよ?」

「あら、本当。組合長、そろそろお暇しないと」

「ああ……それにしても、どこへ行ってもやらかすんだな、お前は」


 む! やらかすとは何事ですか。確かに盗賊団やら海賊の話になったら、フォックさん達の顔色が変わったけど。


 剣持ちさんは、ウィカラビアの話の際に顔色を変えてたなあ。やっぱり、腐敗貴族の話が嫌だったのかも。


 ダガードにも、腐った貴族がいるのかもね。剣持ちさんは銀髪陛下の側にいる人だから、色々思うところがあるんじゃないかな。


 とにかく、説教が終わって良かった……


「……安心しているところ悪いが、数日後には陛下がこちらにいらっしゃるだろう。その際に、陛下からも説教があると思うから、覚悟しておくように」


 な、何だってえええええ!?


 フォックさん達が帰って行った後も、私の疲労は癒えないまま。


「なんでこんなに説教されなきゃならないのよお……」

「それだけ、サーリが皆に大事にされていると思えばよい」

「……じいちゃん、説教始まって、真っ先に逃げたよね?」

「さて、何の話かのう?」


 ずるい! 大人ってずるい! いや、私も大人だけど。でも! ずるい!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る