第135話 どこでもやってる事は同じ

 翌日は、まずみんなで会議。朝食を終えた後、そのままテーブルで話し合う。


 今朝のメニューは昨日のフラフラ鳥を使ったフラフラサンド。


 蒸したフラフラ鳥の胸肉を、自家製マヨネーズで和えたものと、葉野菜を一緒にパンで挟みました。簡単おいしい。


 ブランシュとノワールの分は、食べやすいように一口サイズに切ってある。


 それを見たじいちゃんも、「わしも」というから、結局みんなの分を一口サイズにしてみた。


 そしたら、こっちの方が食べやすかった。明日から、朝食のパンは一口サイズにしようかな。


「で? 一体何を話し合うんじゃ?」


 おっと、そうだった。会議の真っ最中ですよ。


「新しい大陸に到着したじゃない? だから、この先をどうするか、決めようと思って」

「ほう?」

「ピイ?」

「ドウスルノー?」


 うん、それを決めるんだよ。


「このままこの拠点を中心に冬を越すか。それとも――」

「せっかく新しい大陸に来たんじゃ。少しは見て回りたいわい」

「ソダネー」

「ピイイ」

「うん、じゃあ多数決で決まり。明日には出発しようか」


 今日は食肉の確保という事で、フラフラ鳥とか六つ足野豚とか大ウサギとかを狩ろう。これ全部、お肉が美味しいんだって。


 野菜はまあ、亜空間収納に入ってるから足りるだろうし。パンは……そろそろ日本風のパンを焼こう。


 パン種は出来てるから、後は生地をこねて焼くだけ。全部亜空間収納内でやるから、手間いらず。


 狩りはなかなか凄い結果になった。じいちゃんとノワール、私とブランシュに別れて森に入ったんだけど、いや多かった。獲物の数が。


 この辺りって、人はいないみたい。だからか、人間を怖がらないようで、向こうからガンガン攻めてくる。


 こっちは迎え撃つだけでいいんだから、楽だよ。こういうの、入れ食い状態って言うんだっけ? 違ったっけ?


 まあ、その結果。じいちゃん組はフラフラ鳥十六羽、六つ足野豚二十八頭、大ウサギ九羽。それに黒牛ってのを五頭。


 検索先生によれば、この黒牛のお肉は大変おいしいらしい。食べるのが楽しみだね!


 そして私達の方はというと、フラフラ鳥三十八羽、六つ足野豚七頭、大ウサギ五羽、それと六つ足とは違うタイプの赤茶野豚ってのを三十九頭。


 これまた検索先生曰く、赤茶野豚の肉は大変おいしいらしく、特にとんかつがお薦めだって。


 とんかつかあ……しばらく食べてないなあ。揚げ物は、油の処分が大変……あ、検索先生からお報せが。


『亜空間収納内で調理すれば、失敗もなく後片付けもいりません』


 そうか! 亜空間収納内でやればいいんだ! 何て便利なの亜空間収納、そして魔法。


 さらに、教えてくれてありがとう! 検索先生!! もはやあなたなしでは生きていけません!


 いや、割とマジで。




 その日の夜は、とんかつを揚げてみた。六つ足野豚のヒレと、赤茶野豚のヒレの食べ比べ。一口サイズにしたから、私が三つでじいちゃん四つ。


 ブランシュとノワールには四つずつあげた。ソースはとんかつソースを再現。検索先生、本当にありがとう。


 材料がたくさん必要だったけど、大半はこの森にある素材で代替可能だったのは助かる。


 というか、この森すっごい豊かなんだね。思いつきで拠点を築いたけど、良かった良かった。


 さて、実食。さくっと上がったとんかつは、音までおいしい。そしてお肉! 柔らかくてジューシーでおいしい。本当においしい。


「んまー……」


 ああ、生きてて良かった……


 じいちゃん達も気に入ったようで、パクパク食べてる。実は亜空間収納の中では、いくつかロースもとんかつにしてあるので、後日食べよう。


 収納内なら時間経過しないので、いつまでも入れておける。あ、カツサンドもいいねえ。フラフラ鳥でチキンカツもいいかも。




 翌日は、朝はトーストと野菜スープ、コーヒーですます。夕べの夕飯がちょっと重かったからね。


 拠点はこのままに、荷物だけ全部収納に入れて飛行船へ。さあ、次はどこへ行こう。


「人のいるところに、行きたいよねー」

「言葉は通じるんかのう?」

「大丈夫! 検索先生がうまい事翻訳してくれるって!」

「おお、なら問題ないの」


 やはり頼れる相手です、検索先生。


 向かう方向は西。北に行くとダガード同様冬になっちゃうし、南だと今度は暑くなりそうな予感。寒いのは苦手だけど、暑いのも好きじゃないんだ。


 飛行船を飛ばして、一路西へ。山が多い地形らしく、ずっと奥まで山山山。


 下りようにも、これじゃあねえ。しかも、人もいないみたいだし。もうちょっと西かな。


 ちょっとだけ飛行船の速度を上げて、山並みのさらに西へ。お、平地が見える。


「おお? 人発見!」


 街……というより、あれは村かな? ちなみに、こっちの姿は見えないようにステルス機能を使ってる。いきなり空飛ぶ箱が見えたら、驚くよね。


 木立の陰になってるところで飛行船を下りて、まずは村に行ってみる。ここで街の情報が聞けるといいなあ。


 と思って村に近づいたんだけど、あれえ? 何か、警戒されてるよ?


「※○◆@*!!」

「……何て言ってるの?」

「さあ?」

「ピイ?」

「ワカンナーイ」


 だよねえ。という訳で、検索先生、お願いします! 何か、一瞬私達の周囲を淡い光が覆った。


「何しに来ただ!」

「こ、こいつらもこの間の連中の仲間だぞ!」

「お、おら達の村はおら達で守るだ!!」


 この間の連中って、誰?




 とりあえず、落ち着いてもらわないと話も出来ないので、魔法で沈静させた。場所を村長の家に移して、ちょっとしたお話し合い。


 で、聞き出したところによると、どうも盗賊からこの村を守ってやるから、その代わり金を出せと言われてるらしい。


 金がなければ、女を出せとも。


「ふざけんな! 敵だ! そんな理不尽な事を言う奴は、女の敵だ!!」

「お主が落ち着けサーリ」

「だってじいちゃん! お金を集って、おまけに女性まで差し出せって」

「いやいや、どちらかをよこせと言ってきとるだけじゃろうが」

「だけじゃないよ!! 絶対許さん!」

「駄目だこりゃ」


 聞けば、今日にもその連中が来るっていう。よし、飛んで火に入る夏の虫。一網打尽にしてくれるわ! ついでに、盗賊もまとめて始末する!!


 私が鼻息を荒くしていたら、村の門の方が騒がしくなった。みんなで門まで向かうと、なんかチンピラっぽい連中が五、六人いる。


「おーい、金の用意は出来たのかよーう?」

「金が用意出来ねえなら、女をよこしな」

「お? ここらじゃみかけねえ格好の嬢ちゃんじゃねえか、いささか貧相だが、まあいいだ――」

「吹き飛べ!」


 私のかけ声一発。チンピラ共は紐なし逆バンジーをする事になった。あ、ちゃんと着地点には死なないように見えないエアクッションを仕込んだよ?


 敵も然る者、一回じゃおとなしくならなかったんで、何度か紐なし逆バンジーを経験してもらった。


 最後の方は、地面すれすれで止まるように仕掛けたら、色々垂れ流して気を失っちゃった。汚いなあ、もう。


 村の人が用意してくれた荒縄で全員をぎっちり縛り、見張ってもらう。抜け出せないような縛り方したから、大丈夫だと思うけど。


 そんな縛り方どこで憶えたんだって? やだなあ、検索先生が教えてくれたんだよ。


 ……本当だよ?




 地図を確認したら、本当に盗賊のアジトがあるようなので、そっちも掃除にいく。じいちゃんには、村で待ってもらった。


 じいちゃん本人よりも、ブランシュ達が行きたがってさー。二匹を押さえてもらうのに、残ってもらったんだよ。


 で、私は盗賊のアジトへ。中の様子を窺おうと、盗聴用の術式を使う。


『女の数は揃ったか?』

『へい。後は、山裾の村だけです』

『そうか。へっへっへ。攫った女どもを売り飛ばした方が、金になるからなあ』

『ここいらの村は、しけてますからねえ』

『違いねえ』


 なんか、ろくでもない事を言い合いながらガハガハと笑ってるんだけど。ムカつく。どうせなら、あの盗賊共をうっぱらっちゃいたい!


 ああ、ダメダメ。あいつらと同じところに落ちちゃ。一応、連中はここの法で捌いてもらわないと。


 という訳で、アジト内を探索探索う。それにしても、盗賊って洞窟が好きなのかね?


 デンセット近くを荒らしていた盗賊達も、洞窟にアジトを構えていたよなあ。まあ、いいか。


 どうやら洞窟の奥には牢屋が作られていて、そこに連れ去ってきた女性達を入れていた。


 じゃあ、ここだけ隔離して。あ、お宝発見。ドラゴンのお宝に比べると、やっぱりショボいなあ。


 銅貨に銀貨に金貨。これ、こっちのお金かな? やっぱりラウェニアとは違うなあ。


 ついでにこれをもらっていこう。盗まれた人、ごめんなさい。その代わり、この盗賊共はきっちり縛り上げて警察……はないだろうから、それに近いところに突き出すから。


 仕度が調ったので、洞窟内に睡眠の術式を。これに抗える人間はいないのさ! 盗賊達は、みんなおねんね。


 洞窟内に入るのが嫌だったので、魔法で眠った連中を全員引きずり出す。この術式で寝ると、起床の術式を使うまで寝続けるんだよねー。こっそり改良しておきました。


 同じようにお宝も引きずり出す。後は牢屋の扉を開けて、女性達を風の結界で包んであっという間に外へ。


 みんな驚いた顔をしてるなあ。そりゃそうか。


「もう大丈夫ですよ。ここから、自力で家に帰れますか?」

「いえ、あの……出来たら、あそこにある馬車を貸してもらえませんか?」


 女性達の中から、しっかりしてそうな人が歩み出た。馬車? ああ、多分、盗賊達のものだね。


「いいですよ。返却は結構です」

「ありがとうございます!! あの、お名前を伺ってもよろしいかしら?」

「えっと……」


 どうしよう。名乗るべき? その時、脳内に検索先生からのお告げが!!


「サーリです」

「サーリさん……このご恩は、決して忘れませんわ! 本当なら色々伺いたいところですけど、今は緊急時です。これにてごめんあそばせ」


 そう言うと、女性は他の人達を励ましつつ、馬車に乗ってその場を去って行った。


 うーん、何だか格好いいねえ。さて、ここに残された盗賊達は、どうしようか? まずは、村に持って帰ろうかね。

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