第127話 旅に出よう、そうしよう

 デンセットに戻ったら、銀髪陛下や領主様、フォックさん達に出迎えられた。


「ご苦労だった」

「色々活躍したようだのう」

「余計な事はしなかったよな?」


 最後のフォックさん、その言い方はないでしょうに……


 とりあえず、奪ってきたあれこれをどこに出すかでひともめ。


「サーリが奪取してきたのだから、砦に置けばいいのではないか?」

「いや、こんな剣だの槍だの弓矢だの、いりませんよ」


 うちには超優秀な迎撃システムがあるんだから。あ、あれにも何か、名前をつけてあげようっと。あれかな? やっぱり「護くん」とかかな?


 ……何だろう? 今一瞬、検索先生から呆れられた気配を感じた。


 あれこれ私以外の人達が言い合い、結局私の亜空間収納の中に入れっぱなしにしておくって事が決まった。


 あ、このついでに亜空間収納の事がバレました。この世界、魔法でものを多く収納出来るようにする技術はあるんだけど、北にはないみたい。


 銀髪陛下と領主様、それにフォックさんが揃って頭を抱えている。


「……とりあえず、その事は外に漏らさぬようにの」

「心得ております。ローメニカ、わかっているな?」

「はい」


 今現在、組合長室にいるのは銀髪陛下、領主様、剣持ちさん、フォックさん、ローメニカさん、私だけだからね。


 剣持ちさんは陛下の護衛なので、陛下が言ってよしというまでは絶対に口を割らないんだって。何だか、それも怖い……


 まあ、そんなんで、奪ってきたものは亜空間収納に入れっぱなしにしておけとなりました。絶対扱いが面倒だからとか、そんな理由だと思う。


 便利に使われてるなあ。でもまあ、砦を横取りしようなんて連中は大嫌いなので、銀髪陛下達に使われても別にいい。


 敵の敵は味方なのだ。


 後は銀髪陛下や領主様がやってくれるというので、私は砦に戻る事になった。しばらくウーズベルの連中も来ないだろう、だってさ。


 そりゃ武器や食料、ついでに甲冑なんかも全部盗んできたからね。落ち着いたら、これどこかに行って売り払おう。


 南ラウェニアのどっかの国なら、買ってくれるかなあ? 正直南にはあんまり近寄りたくないけど、ローデン以外なら大丈夫でしょ。多分。




 砦に戻ると、じいちゃんが出迎えてくれた。


「おお、遅かったのう」

「それがさあ。聞いてよじいちゃん」


 私はデンセットに行ってからのあれこれをじいちゃんに愚痴った。


「この砦を横取りしようとしていたっていうのよ!? 信じられる? 何て図々しいのよ!」

「……確かに、命知らずじゃのう」

「だから、腹いせ混じりに、奴らの武器と食料と甲冑、全部盗んできた!」

「ほう。……それは、お主の考えでか?」

「ううん? 領主様に言われたの。でも、それやればあいつらも困るだろうと思って」

「なるほどのう……」


 じいちゃんはそう言うと、何やら考え込んじゃった。どうしたんだろう?


 しばらくそうしていたら、唐突にじいちゃんが聞いてきた。


「そういえば、砦の修繕はどのくらいまで進んだかの?」

「え? 後は外側と中側の壁を完全に乾かして、あと地下室に手を入れて、畑を整備したり温室に果物の木を植えたりしたいんだ」

「ふうむ……のう、これから北は本格的な冬になる。もうそろそろ雪も降ってくるじゃろう」


 そういえば、そうだった。初めての北での冬。この辺りの雪は、どのくらい降るんだろう? でも、あんまり寒いのはなあ。


 雪かきに関しては、魔法でちゃちゃっと出来るので問題なし。


 そんな事を考えていたら、じいちゃんから提案があった。


「どうじゃ? しばらく飛行船であちこち廻ってみんか? 南ラウェニアでなくとも、西や東に進んでいけば、別の大陸に出るやもしれんぞ?」


 別の大陸! なんて素敵な響き!


 考えてみたら、もう私を縛るものは何もない。神子という称号も、王子妃という立場もとうに捨てた。


 今の私は、冒険者のサーリ。だったら、冒険をしなくて何とする!


「いいね、じいちゃん。じゃあ、出かけちゃおうか?」

「うむ。丁度いい事に、兵団から食料を失敬してきたのじゃろう? 仕度をせずに済んで、ちょうどいいのう」


 それもそうだ。食料には大量の小麦粉や肉、調味料なんかも含まれていた。


 まあ、それ以外にも結構な量の料理が亜空間収納にはしまってあるけれどね。


 幸い、飛行船を造る際に集めた素材で、服やら上着やらコートやらを亜空間収納で作りまくってある。


 それに、飛行船の中は温度調整が利いてるから、乗っている間は暑さ寒さは問題ない。


 よし、じゃあ早速飛行船を出して、出発しようか。

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