第125話 ウーズベル、滅ぶべし!!
私がデンセットへの同行を求められたのは、捕まえた人達も一緒に連れて行くから。つまり、運搬係です。
「違う!」
「え? そうなの?」
「奴らの狙いがお前だからだ!」
解せぬ。ウーズベルの人達の狙いが私なら、砦から出る意味ないと思うのよ? あそこはデンセットより安全だし。
あれか? デンセットにおびき寄せて一網打尽にする計算か?
「それも違うが……まあいい。そう思っておけ。とりあえず、ジンドと話し合わなくてはならん」
「はあ、そうですか」
銀髪陛下と領主様の話し合いに、私は不要だと思うんだけどなあ。違うの?
デンセットの街中は、いつもと様子が違ってる。何か、空気がピリピリしてる感じ。
「このまま組合まで行くぞ。ああ、後ろの連中も一緒だ。向こうで保安の連中に引き渡す」
て事は、後ろに捕まっている彼等も牢屋行きって事だね。何か、牢屋って地下にあって薄暗くて臭そうなイメージ。絶対近寄りたくないわ。
組合の前には人だかり。その人達も、銀髪陛下の姿を見たら蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。何だったんだろう?
「物見高い連中だ」
「全員、冒険者ですよ。稼ぎ時と思ったのか、それとも危険から遠ざかる為の情報収集か、どちらかですね」
「どのみち、しばらく街は封鎖されるというのに……たくましいやらなんやら」
へー、デンセットって、封鎖されるのかー。まあ、街の門が閉じられても、私は外に出られるからいいけど。私のほうきは凄いんだぞ。
ここで後ろのたくさんの人達とはお別れ。彼等はまだ捕獲用の網の中だから、そのまま引き渡せばOK。
鎧の人は一人別口で縛られているので、このまま一緒に領主様のところへ行くみたい。
後ろ手に縛られているだけなので、逃げだそうと思えば出来そうに見えるけど、これが出来ないんだなあ。
あ、ちなみに鎧の人もそう思ったらしく、何度か逃げだそうとしたけど、その度に縛っているロープが勝手に銀髪陛下のところまで引き戻している。
自動で連れ戻すなんて、便利でしょ? って自慢しようと陛下の方を見たら、何だか遠い目をしていたっけ。
「おお、これは陛下。ご機嫌うるわしく」
「挨拶はいい。これが今日来たウーズベルの人間だ。見覚えのある者は?」
「……ウーズベルの私兵団の副団長ですよ」
苦い顔でそう言ったのは、組合長室の真の主であるフォックさん。この人、隣領の人までよく知ってるなあ。
同じ事を銀髪陛下も思ったのか、確認した。
「間違いはないか?」
「ありません。ウーズベルとは何度かうちのがもめ事を起こした事がありましてね。その際にあちら側の責任者としてこっちに来たんですよ。そうだよなあ?」
フォックさんの声に、鎧の人はぷいっと顔を背けてしまう。でも、その態度で正解だと言ってるようなものだよ?
そこからは、鎧の人に対する尋問大会だった。といっても、銀髪陛下や領主様、フォックさんが勝手にあれこれ聞いてるだけで、鎧の人は何も言わない。
でも、いいんだって。何でだろう? その理由は、一通り尋問が終わって、鎧の人が牢屋に送られてから教えてもらった。
「この部屋には、相手の心のわずかな動きに反応する仕掛けがあってな。嘘は吐けないんだよ」
なるほど、部屋丸ごと嘘発見器って訳だね。大がかりだなあ。
ともかく、そのおかげで向こうの情報がある程度わかったらしいよ。
やっぱり、ウーズベルは私を兵器として使うつもりだったらしい。しかも、あの砦を横取りしようと考えていたんだって!
何それ。絶対許せん!!
「ウーズベル滅ぶべし!!」
いきなり叫んだ私に、部屋の人達が驚いていたけど、気にしない気にしない。
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