第122話 魔力酔い
壁のコンクリートが乾くのを待つ間、門を前に唸る。
「うーん……どうしよう……」
検索先生で城砦の門を調べたら、色々なタイプがあるんだねえ。重くて厚い扉一枚のとか、跳ね橋タイプの門とか、上から振ってくるタイプのとか。
第一区域と第二区域の門は、お屋敷なんかにありそうなロートアイアンの門をつける事にした。
正直、ここまで敵に突破される事って、殆どないから。
問題は、第三区域の門。ここだけは頑丈に作ろうかなあ。頑丈と言えばドラゴンコンクリートだけど、門とは相性が悪そう。
もう一回、検索先生が調べてくれた結果を見てみよう。どれがいいかなあ、っと。
「うーん、やっぱり揃えたいよねえ?」
第一区域と第二区域の門と、第三区域の門を揃えたいんだ。そうなると、防御面を考えて櫓門かな?
手前と奥の二重の落とし格子門で、格子門を他の区域で使ってるものと揃えるのはどうだろう。
櫓はドラゴンコンクリートで、格子門は迎撃システムを作る際に採取した余りの鉱石を使ってちゃちゃっと作る。
うん、こんな感じ。格子門を落とすタイミングは、迎撃システムと連動させておこうっと。こうしておけば、自動で開け閉めしてもらえるからね。
「よし、完成! 後はコンクリートが乾くのを待つだけ! ……なんだけど」
ここはやはり、魔法を使うべきでしょう。ドラゴンコンクリートって、魔力を使った方が乾きやすく強度も上がるそうだから。
第二区域の壁と第三区域の壁、櫓門全てに魔力を流す。これだけ広範囲に結構強めの魔力を流すと、ちょっと疲れるね。
でも、疲労を引き換えにしただけはある。三十分もしないでコンクリートが全て乾いて壁の完成でーす。
櫓門に落とし格子を設置して迎撃システムとリンク。終わってから第二区域の門も取り付けていそいそと第一区域に戻ったら、じいちゃんが怖い顔をして待っていた。
「あれ? じいちゃん、どうして……」
「この馬鹿もんがああああ!」
「いったあああああ!!」
怒号と共に、げんこつが振ってきた。脳天直撃。目の前に星が飛んだよ……
「何すんのさ!」
「あれ程広範囲に魔力を流す時は気をつけいと言ったじゃろうが!!」
「だってじいちゃんだけだし……あ!」
違うよ! 今砦には銀髪陛下とローメニカさんがいるじゃない!
「じいちゃん! あの二人!」
「幸い、二人とも魔力には耐性があったようじゃ。軽い魔力酔いで済んでおるわい」
「良かったあ……」
「良くない!!」
再び、じいちゃんのげんこつが脳天に落っこちてきた。痛い。
他者の魔力に触れる時、耐性がない人だと魔力酔いを起こして倒れてしまう事がある。
酒に酔うのと一緒で、体質により酔いの状態が変わるんだって。軽い人ならめまい程度、重い人だと意識を失って二、三日戻らない事もあるとか。
で、今日、私は壁のコンクリートを早く乾かす為に、広範囲にわたって結構強めの魔力を流しました。
その結果、砦内にいた銀髪陛下とローメニカさんがめまいを起こしてしまったらしい。
じいちゃんが平気なのは、自身強大な魔力を保有しているから。私の魔力の干渉を受け付けず、何ならはじき返す人だからね。
「全く、こんな事魔法士ならば初歩の初歩じゃぞ。お主、王宮生活で魔法士の心得をどこかへやってきたようじゃの?」
う……さすがに否定出来ない。ローデンの王宮生活は決して思い出したいものではないけど、確かにあの追いまくられる日々の中、あれこれ忘れた気がする。
縮こまっていたら、頭の上からじいちゃんの溜息が聞こえてきた。
「また、基礎からみっちりしごき直すぞい」
「ええええええええ!?」
「文句があるのかのう?」
いえ、ないです……
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