第121話 でも、お高いんでしょう?
じいちゃん、どう答えるんだろうなあ、と思っていたら、いきなり笑い出した。
「ふぉっふぉっふぉっ、わしとサーリの二人を同時に囲い込むのなら、この国の数年分の予算が必要ですなあ」
「ふっ。随分と大きく出たじゃないか」
「それだけの実力がありますでのう」
何だろう? 二人の間に火花が見えますぞ?
それにしても、じいちゃんもふっかけたなあ。この国の国家予算数年分って、どのくらいの額なんだろう?
その金額で、私達はいつまで囲われる予定なんだろうね?
にらみ合いを続けていた二人だけど、先に音を上げたのは銀髪陛下だった。
「……さすがに国家予算数年分を払う訳にはいかんな」
「賢明な判断ですな」
「よく言う」
じいちゃんがしれっと返したのに対し、銀髪陛下が苦笑いを浮かべる。
昼食まで角塔にいた銀髪陛下も、私達が作業を開始するのを聞いて来客用棟に戻っていった。
「それで? 今日は何を作るつもりなんじゃ?」
「急ぐのは、じいちゃんの研究用の建物だね」
「別に急いどらんぞ?」
「そうなの?」
てっきり早く作れって急かされるかと思ったのに。でも、早めに欲しいでしょ?
「別に研究部屋がなくとも、ここでやればいいんじゃよ」
じいちゃんは指先で自分の頭を指しながら、にやっと笑った。くそう、何かちょっと格好いいぞ。
でも、後回しにしていいのなら、壁の修繕をやろうかな。
第一区域の壁は終わったけど、第二区域、第三区域の壁はもうちょっと厚く高くしようと思ってさ。
材料は全部揃っているので、いつでもいける。いやあ、ドラゴンの島に行って本当に良かったよ。
あ、そろそろドラゴンのところに果実を届けないとね。約束だし。色々もらっちゃったから、お返しはするべき。
「じいちゃん、作業が終わったら、一度ドラゴンのところに行ってくるね」
「ふむ? おお、果実のお届けか。気をつけてな」
「はーい」
では、行く前に壁の修繕修繕。
第一区域の壁は、基本塔の高さより少しだけ低い。建物の階数でいうと三階建てくらいかな。
それに対し、第二区域、第三区域の壁は倍くらいの高さにしようかな、と。
今回の隣領の連中が来てわかったんだけど、壁にはしごをかけて上ろうとする連中がいる。
今の三階建てくらいの高さなら上れるっぽいので、だったら単純に倍の高さにしてやれ、とね。
もっと高くしてもいいかもしれないけど、必要があったらその時にやればいいや。今は六階建て分の高さで。これだって、結構高いし。
地下室部分もいじりたいけど、今は上を完成させてから、かな。しばらく地下は使わないだろうし。
きちんと整えれば、湖側からほうきで出るってのも出来るよねー。
だからどうだって話だけど。いや、あんまり意味ないのはわかってるよ……
第二区域、第三区域ともに、壁の石組みはあらかた終えてある。で、計画変更で高さを増すので、この上にさらに石を積んで崩れないよう魔法で支える。
で、その積んだ石を覆うように結界を張り、そこに亜空間収納で作ったドラゴンコンクリートを流す。
そしてこのドラゴンコンクリート、下位種の骨で作ったものではなく、この間もらった牙と爪を使って作った、いわば上位種ドラゴンコンクリート。
強度も粘りも下位種のものとは比べものにならないよ。これならどんな敵が押し寄せても、大丈夫!
あ、門も作らないと。ここ、どうしようかな……
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