第117話 招かれざる客?

 角塔のダイニングにて、みんなでご飯。今日のメニューは普通にパンとソーセージ、スクランブルエッグ、サラダ、コーヒー、ジュース。


 あ、ヨーグルトがあってもいいかも。その為にも、温室で果物を栽培せねば。


 イチゴは絶対だね。あとバナナも相性がいいし、桃も好き。パインもいいな。夢が広がる。


「サーリよ、自分の考えから帰ってこんか」


 おっといけない。今は一人じゃなかったっけ。じいちゃんもいるし、銀髪陛下やローメニカさんもいるんだった。


「表の連中、何やら言っておるぞ?」

「えー?」

『ここに冒険者の魔法士がいるであろう! 我等は隣領ウーズベル領主、アキュート様よりの使者である! 出てきて話を聞くがよい!』

「やなこった」


 一言言うと、私は食事を再開した。ローメニカさん、こらえなくていいから笑っていいですよもう。銀髪陛下も、目を見開きすぎ。落っこちるよ。


 でも、これで表の連中がウーズベルの兵士達っていうのは確定したね。銀髪陛下が何やら考え込んでいるみたいだけど、知らない知らない。


 その後も何やら言っていたけど、全部無視。向こうに出来る事なんてないし。私の結界は優秀なのだよ、はっはっは。


 食事はもうあらかた終わっていて、後はお片付けって段階。ローメニカさんが後片付けを申し出てくれたけど、うち、便利なものがあるんだよねえ。


「じゃーん! 食洗機でーす」

「しょくせんき? って、何かしら?」

「食器洗い乾燥機の略ですよ。汚れた食器をこう入れてー、洗剤を入れて後はスイッチポン!」


 これは浄化の力をほんのわずかしか使っていない、普通タイプ。最初浄化をバリバリに使ったやつを作ったら、じいちゃんに怒られたから。


 浄化って、普通は上位の聖職者しか使えないらしいね。神子の私は最初から使えましたが何か?


 これは水と洗剤の力に、ごくわずかの浄化を入れて食器を洗浄、すすぎが終わったら風と火の魔法で温風を出して、からっと乾燥させるのだ。


 それを説明したら、ローメニカさんの目が輝いている。うん、欲しいんだね? でもあげないよ?


「これも魔力が必要なので……」

「そんなあ」


 さっきの輝きから一転、涙に濡れるローメニカさん。わかる! わかるよ! 後片付け、面倒だもんね!


 聞けば、現在ローメニカさんは一日置きに家事手伝いの人を雇っているそうだ。お仕事、大変だもんね。


「でも! このしょくせんき? があれば、雇わなくて済むし!」

「……非情に言いにくいですが、多分家事手伝いを雇い続ける方が、安く済むかと」

「そんなに!?」

「はい」


 うちにあるのは、材料全部自分で取ってきたし、自分で作ったから私の労力以外タダだけど、作って売るとか注文受けて作るとなったら、多分ものすんごくお金がかかると思うんだ。


 維持する為の魔石も必要だし、そのお金もかかるよ。うちはほら、私でもじいちゃんでも魔力を注入出来るし。


 その辺りを説明すると、ローメニカさんはうなだれてしまった。何か、ごめんね。


 表の連中は、何を言ってもこっちがリアクションしないのにしびれを切らしたのか、一団のうちの一部をデンセットに向かわせた。


「ねえ、あの連中、やっぱりデンセットに向かったんだけど」

「向かうだけなら問題はない。向かった連中が攻撃をしてきたら、反撃しても良いと許可は出してある」


 銀髪陛下、実は色々私が聞いていないところで指示を出していたらしいよ。やっぱり一介の冒険者に聞かせられない内容とかも、あるもんね。


 一応、地図で様子を窺っておこう。ヤバそうだったら、向こうにも迎撃システム送ればいいし。


 何なら、今から送ろうかな……ちょっとじいちゃん! 呆れた目でこっち見るの、やめてよ。

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