第115話 ローメニカさんが凄い
デンセットから砦への道、帰りは馬車を用意されてしまいましたよー。
『陛下を歩かせるなど、もっての他だ!!』
って、剣持ちさんに怒られたー。この場合、理不尽なのは私が怒られた事だと思うのよー?
私、銀髪陛下に砦に来てほしいなんて、頼んでないよね?
「サーリ、機嫌を直して」
「無理ですー」
ローメニカさんが申し訳なさそうに言ってくるけど、本当無理ですー。ぼろい荷馬車だからお尻も痛いし。
この馬車にも、剣持ちさんが怒ったんだよなあ。こんなゴミのような馬車に陛下をお乗せするのか! とか何とか。
結局、最後は銀髪陛下本人に「やかましい! とっとと帰れ!」って怒鳴られてしょぼんとしてたけど。
その銀髪陛下は、荷馬車の荷台で仰向けになり、空を見上げている。今日はよく晴れてるからねえ。でも、そろそろ空気がかなり冷たい。
砦に到着すると、ブランシュとノワールが出迎えに来てくれた。
「ピイイ」
「オ帰リー」
「ただいまー!」
ああ、私の癒やしよ。二匹とも、ここしばらくで少し大きくなってる。ノワールは大型犬くらいに、ブランシュも小型犬くらいの大きさになった。
どっちもちゃんと成長してるんだねえ。
そんな二匹と戯れていたら、奥からじいちゃんが来た。
「おお、戻ったか。……で? 後ろの二人は?」
「ええとお……」
「お久しぶりです、バムさん。急に来てしまい、申し訳ありません」
ローメニカさんがにこやかにじいちゃんに挨拶する。バムって誰だっけ? あ、じいちゃんの偽名か。使ってなかったから忘れてた。
ローメニカさんは、デンセットでの話し合いのあれこれをわかりやすく説明してくれて、砦に来た理由も話してくれる。
「という訳でして、いつまたウーズベルの兵がこないとも限りません。ですので、こちらのカイと、私が護衛という形で砦に来る事になったんです」
あれ? ローメニカさんも護衛なの? それと、銀髪陛下は「カイ」と名乗るそうです。まんまじゃん……まあ、じいちゃんもそうだから、いいか。
「護衛のう……ここにはいらんと思うのじゃが」
「そこを何とか。お二人だけでは手が回らない事もあるでしょうし」
「確かにのう。それに、お二人もここにいた方が安全じゃろう」
「では、そういう事で」
ローメニカさん、凄いなあ。じいちゃんもしっかり丸め込んじゃったよ。
とりあえず、二人には新築したばかりの客用建物に入ってもらう事にした。銀髪陛下があちこちを物珍しそうに見回ってるのが、ちょっと気になる。
二人を建物に案内して、必要なものを揃えるのに塔に入ろうとしたら、じいちゃんに止められた。
「サーリよ、何故あの男を連れてきた?」
「連れてきたって……別に私が連れてきた訳じゃなくて、勝手についてきたっていうか……」
決して私が連れてきた訳じゃないって言いたかったんだけど、じいちゃんは声を潜めて続ける。
「お主、あれがこの国の王だと知っておるのか?」
「じ、じいちゃん!? 何で知って――」
「声が大きい! 遠目じゃがの、あれが王位に就いた時の祝賀の際、城から一般の者へ顔見せを行ったのじゃ。その時にのう」
「そうだったんだ……私、デンセットで聞かされてびっくりしてさ」
「知らんかったんか」
じいちゃんは呆れ顔だけど、しょうがないじゃん。この国の国民じゃないんだし。デンセットでも他の街でも、王族の肖像画とか見た事ないよ。
「南ならともかく、北の王族とか会った事ないし」
「それもそうだの」
そう、南ラウェニアの各国王族なら、仕事の一環で顔と名前を覚えさせられたんだよね。これでも一応、王子妃やってたから。
無駄知識になったけどねー。
「とにかく、あの銀髪陛下は剣の腕はいいんだってさ。だから、また襲撃された時用にって、本人が」
「ウーズベルが謀反のう……何やら裏がありそうじゃが。まあいい。また襲撃してくるのなら、迎撃するんじゃろ?」
「もちろん!」
その為の砦じゃない! 頑張って最高素材で強化してるから、ショボい攻撃程度じゃびくともしないよ!
それに迎撃システムもあるし、じいちゃんと私がいる。もう鬼に金棒だね。
という訳で、ウーズベルの連中、いつでも来いやあ!
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