第109話 やる事終わって帰ったら……
ドラゴンのところへ戻ったら、おいしそうに果実をちびちび食べていた。大きな口なんだから、がぶっと一気に食べればいいのに。
「果実、まだあるよ?」
『何!? 本当か!?』
「うん」
神馬にもあげようと思って、少し多めに取ってきたんだよねえ。
それに、ここにポイントを置けば、今から行って取ってくる事も出来るって言ったのになあ。
それをもう一回教えたら、ドラゴンが目を見開いた。
『……その、ポイントとやらは、大きいのか?』
「ううん、目には見えないよ?」
私が魔法で印を付けるだけだからね。本当に旗とかが立ってる訳じゃないんだ。
それを言ったら、またしてもドラゴンが目を丸くしている。
『そうなのか……では、その……もう少し、この果実を……』
「いいよ! じゃあ、ちょっと行ってくるね」
先にここらにポイントを設定して、ポイント間移動であっという間に魔大陸へ。
何かじいちゃんの焦った声が聞こえた気がしたけど、気のせい気のせい。
魔大陸から果実をたくさん持ち帰って、それを全部ドラゴンの前に出す。ドラゴン、よだれが凄いよ?
「誰も取らないから、たくさん食べて」
『うぬう……嬉しいのだが、すぐになくなってしまうのが惜しい……』
この果実、そこまで日持ちしないしなあ。何だったら、定期的にここまで果実を届けに来ようか? 果実の定期便って感じ。
提案したら、ドラゴンがまた目を丸くした。
『……良いのか?』
「今回たくさん素材をもらったから、そのお礼って事で」
『あれか……何故、人の子はあのようなものを欲しがるのか……』
ドラゴンはうんざりした顔をしている。どうしてって、そりゃあ色々使える素材だもん。高級なんだよ?
でも、そんな事言ってもドラゴンには嬉しくないだろうしなあ。
「とりあえず、あなたにとっていらないものが、果実に化けるとでも思って。ね?」
『ぐぬううう』
まあ、抜け落ちた髪の毛とか切った爪がごちそうに早変わり、なんて私でも悩むよ。でも、世の中ギブアンドテイクだ! 知らんけど。
悩み続けるドラゴンを放っておいて、私達は帰る事にした。行きは大変だったけど、帰りはポイント間移動が使えるから楽だねえ。
「せっかくゴンドラを作ったのにのう……」
「そんなにしょげないでよ、じいちゃん。砦の修繕が終わったら、世界を見に行くんでしょ? 帰りは移動が使えるけど、行きは使えないんだから、飛行船頼りだよ?」
「そうか……そうじゃな」
よし、じいちゃんの気分も上向いたな。では、みんなで砦に帰るとしよう。
一瞬で変わる景色。そして目の前には何やら網でひとまとめにされている人達。
「……何これ?」
「お主が仕掛けていった捕獲用の道具で捕まった連中じゃないかのう」
マジかー。つか、何でこうも砦に忍び込もうとするのかねえ?
あー。またフォックさんに面倒かけるなあ。いっそ、このまま網ごと持ち上げて、海にドボンと……
「お主、何やらよくない事を考えておるな? やめとけやめとけ。面倒は余所に放り投げるに限る」
それもどうかと思うよ? じいちゃん。
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