第106話 強風の島
島には植物らしい植物もなく、岩だらけだ。歩くの大変。なので、結界で覆った後、その結界を浮かせて移動中。
あ、飛行船は亜空間収納に入れてる。放っておいて風で吹き飛ばされるのも困るから。
結界でふよふよ浮きながらの移動は、何かアトラクションの乗り物みたい。
「楽じゃのう」
「そうだねえ。ほうきの応用だから、難しい事していないし」
そう、浮かせるのは難しくないんだな。どっちかっていうと、強風に煽られるのをどうにかするのが大変。
それも、魔法でなんとかした。結界の周囲に強風よりもさらに強い風の渦を作ると、中心は無風になるんだな。台風の目みたいな感じ。
島には吹き飛ばされるようなものは何もないからこそ、使える手だね。中央からちょっとそれた辺りに山がある。あれが火山だな。
火口から煙が上がってるから、まだ活発に活動してるのかも。噴火があったら困るな。あ、でも結界があるから、大丈夫か。空に逃げる手もあるし。
そのまま進んでいくと、火山の裾野に横穴がある。ここから入れるかな?
入ったら、奥は真っ暗。当然か。慌てて明かりを出したよ。
「こりゃ、天然の洞窟じゃな」
「見ただけでわかるの?」
「うむ。人の手が入っておれば、削った後がもっとはっきり残るからのう」
そういうものなんだ。横穴は大きくて、奥へ、下へと続いている。ドラゴンは、火山の下に住んでいるらしい。
ずーっと横穴を進んで、たまに縦穴を下りて進んだ先に、明るい場所がある。神馬からの鈴は、さっきからうるさいくらいに鳴っていた。
あそこが、ドラゴンの居場所? やがて到着した先には、見上げる程大きなドラゴンがいた。でかい……
『このような場所まで、人の子が来るとは……む? 貴様、普通の人の子ではないな? 何者?』
え? 私の事? 思わず自分を指差すと、ドラゴンがゆっくり頷いた。
「普通かどうかは知らないけど、私、この世界の人間じゃないです」
『なんと、異界の人の子か? いや、それにしては神気が強すぎる。貴様、もしや神子ではないか?』
あ、バレた。
「じいちゃん、どうしよう。神子ってバレた」
「相手はドラゴンじゃ、知られたところで不利益はあるまい」
そうか。神子ってバレると困るのは、人間相手だわ。いやー、最近自分が神子だって事意識せずに過ごしていたから、いきなり言われるとびっくりするよ。
「えーと、神子として召喚された者です」
『そうか……では、あの邪神を封じたのは貴様だな?』
う……封印じゃなくて、完全浄化なんだけどな。ちらりとじいちゃんを見ると、首を横に振ってる。これは、本当の事を言うなって事なのか、それとも逆なのか。
『違うのか?』
「えー、いや、確かに邪神に関してあれこれしたのは私なんだけど……」
『煮え切らぬ。そうなのか違うのか、はっきりせい!』
「完全浄化しましたごめんなさいいいい!」
ドラゴンに凄まれたら、怖いよね? 怖いとつい、本当の事を喋っちゃうよね? あれだよ、職員室で先生に怒られた時と同じだよ。
じいちゃん、そんな「やっちまったよ」って顔で頭抱えないで。実は私もそう思ってるから……
ドラゴンからどんな反応が来るのか怖くて、首をすくめていたら、何もこない。あれ?
見たら、ドラゴンが何やら固まってるよ? 大丈夫? 目の前で手を振ったら、正気に戻るかな?
「じいちゃん、どうしよう?」
「どうしようって……どうも出来んじゃろうよ」
「えー……」
本当、どうしようね?
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