第104話 南へGO!
砦の修繕は順調にいっている。
「今度から、一番内側の壁に囲まれた区域を第一区域、二番目の壁に囲まれた区域を第二区域、一番外側の壁に囲まれた区域を第三区域と呼ぶ事にします」
「別に構わんが。また唐突じゃのう」
「だって、この間の食事会の時にも説明に困ったから……」
そう、つい二日前に砦で行われた食事会の際、客がどこまで入っていいのかと聞かれて、大変だったんだ。
いちいち「二番目の壁に囲まれた区域から奥には入らないように」って言うのがね……何回も繰り返したから、面倒臭くて。
で、それぞれの区域に番号を振って呼びやすくしてみました! いや、これからも余所の人に説明する必要がない事を祈るけど。
で、第一区域は大分修繕が進んだ。まず、二つの塔の大まかな部分が完成。ドラゴンコンクリートがいい仕事しています。
ちなみに塔の呼び名は、そのまま四角い塔が「角塔」、丸い塔が「丸塔」となっている。まんまだけど、いいの。
「凝った名前をつけると、自分が忘れるからじゃろうが」
「いいの!」
もう、どうしてじいちゃんは言わなくていい事をいちいち言うかなあ!?
外観の形の違いはあるけれど、設備に関してはあまり変わらない。
壁や天井、床には全てスライム断熱材を使用し、屋上はルーフバルコニーにしてある。そのうち妖霊樹でテーブルや椅子を作って置こうと思う。
この辺りは夏は涼しく、冬は厳しいというから、暑さ対策はひとまず考えず、寒さ対策だけしておいた。
その為の断熱だし、あとは各部屋で暖炉を使えばいいかなって。あ、床材に妖霊樹を使ったから、少しは足下からの冷えも防げるかな。
検索先生によると、妖霊樹の木材って温度湿度の調節に凄くいいんだって。だから高値になるそうだけど、なかなか採取出来ないんだとか。
あれえ? あの大量にいる谷は? 普通の人は、あの谷まで行けないそうです。ああ、そう……
亜空間収納内で作り続けていた布や糸も、いい感じに仕上がってきている。ついでに砦の周囲で採取した草花で染めたら、綺麗な色が出た。
これでゴンドラの各部屋のカーテンやシーツ、ラグなどが完成。ついでに塔の分のファブリックも完成。
「うーん、椅子だけでなく、ソファがほしいなあ……」
でも、こっちでああいった家具を探そうとすると、大抵貴族向けのすんごい代物になるんだよね……一般庶民は使わないそうな。
でも、やっぱりごろっと横になれるソファがほしい。なるべくシンプルなデザインのやつ。
となったら、やっぱり自分で作るしかないでしょ! 早速検索先生に相談相談。
手持ちの材料でいけそうだから、亜空間収納でこっそり作成しておく。複数作れる素材があるから、ゴンドラの分も作っておこう。
そうして、本格的な冬が来る前に、やっと出立の準備が整った。
「やっとかあ……」
「冬が来る前で良かったのう」
本当だよ。まあ、魔法なしで準備してたら、何ヶ月、下手したら何年かかったかわからないけど。
それに、いい素材を集められたのも、情報をくれた検索先生と魔法のおかげ。ありがたやありがたや。
亜空間収納の中には、たくさんの料理や食材が入ってる。コビト羊の羊毛で作った目の細かい網の中には、飛びウサギの毛皮で作ったバルーンがぎっしり。
木製ロッカーを開けば、ゴンドラの入り口に直結していて、出入り自由。よし、これで大丈夫。
「あ、フォックさんにしばらく留守にするって、言っておこうっと」
「ついでに、砦には近づかん方がええと教えておくがええ」
「そうだね」
結界は維持が面倒なので、今回は迎撃システムをフル稼働させる事になってる。敷地内に入ったら捕縛、第二区域まで侵入した時点で攻撃を許可した。
盗まれるものはないと思うけど、内部のあれこれを見られるのは嫌だからさ。ついでに、第一区域を守る門には丈夫な扉をつけておいた。
戸締まりよし、報告よし、忘れ物なし。では。
「ドラゴンの島に向けて、出発!」
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