第102話 まーいっかー

 個室は広々としていて、テーブルとソファ、書き物机なんかが置いてある。


「他にも好きに置いておくといい」


 んー、でも、あんまり物は持たないようにしてるからなー。魔法を使うので、武器は持たないし。服も着替え分あわせて三着もあればいいし。


 折角だから、何か置物でも作る? ちょうど磁器制作をしている最中だから、花瓶とか? お皿も棚を作って飾ってもいいかも。


 左右に扉が二つあって、右がトイレとお風呂場、洗面所。左がベッドルーム。妖霊樹で作ったベッドフレームが既に置いてあった。


「マットレスはお主が作った方がよかろうと思っての」

「ふっふっふ。任せなさーい!」


 実は亜空間収納の中に、ベッドマットはいくつか入ってるんだ。テントのベッド用に作った際、多めに作って保管しておいたの。備えあれば憂いなし。


 数は……二十以上あるな。じゃあ、全部の個室に置いておこうっと。


「寝具とかカーテンとかは? 窓はあるけど、ガラスが入ってないね?」

「それはほれ、ドラゴンの鱗を使うって事で」

「いや、これでその鱗をもらいに行くんでしょうが……」


 ドラゴンのところへ行くまで、窓はこのままにするつもり?


「まあ、多分大丈夫じゃろ」

「本当に?」

「何せ、これはこのまま空に浮かべるものではないからのう」


 あー、亜空間技術を使って、木製ロッカーに入れるんだっけ。ていうか、亜空間の中って人は入れるものなの?


 ああ、大丈夫にする事も出来るんですか。さすがですよじいちゃん。じゃあまあ、窓はこのままでいいけど、カーテンは欲しいなあ。


 じいちゃんは手持ちにいい素材がないって言うから、検索先生に問い合わせ。亜空間収納に入ってるものに関しては、検索先生で探す事が可能だ。


 あ、ヌメリゴマがある。これ、再封印の旅の途中で、水場の魔物を狩った時に採取したんだよね。


 茎の部分から繊維を取り出せて、糸に出来るって検索先生が教えてくれたから。いつもありがとうございます! 先生!


 ヌメリゴマの作業工程は、まず茎の部分を発酵させて余分な箇所を排除、残った繊維から糸を作る。ここまでが糸にする工程。


 その次に、糸を使って布を織る。工程を二つに分けたのは、布を作った後に縫う必要があった時の為。


 発酵には時間がかかるんだけど、そこは素敵謎パワー魔法があるから大丈夫。本当便利だ。


 これでシーツ類は大丈夫。ベッドパッドも、ほしいから、別の作業区域を作成、素材を入れて工程を組み込んであとは待つだけ。


 これでベッド関連は終了。あ、枕がないや。そば殻……はないよな、さすがに。


 という訳で、いつもの検索先生に相談。ほうほう、水鳥の羽毛を使うと羽根枕が出来る、と。お薦めは北シロガン。


 あ、デンセットに扱ってるお店があるんだ。じゃあ、そこで羽毛を買うか、製品の枕を買うかのどちらかでいいか。


「とりあえず、ベッドのマットレスとベッドパッド、シーツ、枕は用意可能になりましたー」

「お主はほんに器用じゃのう」

「じいちゃんに鍛えられたからね」

「鍛えた覚えはないぞい」


 嘘だ。解体の魔法とか物作る魔法とか、じいちゃんに教わったぞ。




 個室にはトイレと風呂場が完備されてた。仕組みさえわかっていれば、じいちゃんなら作れるからね。そして仕組みはちゃんと説明済み。


「最後に一番上に行くぞい」


 上? 甲板? と思ったら、違った。なんと、展望風呂がありました!


「何これ凄いー!!」


 ちゃんと男女用に分かれていて、どっちも同じ大きさ。材質は大理石っぽい石だ。こんなの、どこで手に入れたの?


「以前、ちょいとな」


 そう言ってにやりと笑うじいちゃん。何やったのよ……


 展望風呂は、その名の通り湯船の向こうが全面窓。といっても、何もハマっていないけど。あれ? 展望じゃなくて、露天? どっちだ?


 広い湯船の中央には大きな彫刻。そこからお湯が出るような仕掛けになってるらしい。どこの王侯貴族のお風呂場よ。綺麗だから、まーいっかー。

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