第97話 お宝お宝

 領主様のお城で見せてもらった地図によると、未開発の山は領都からかなり南にあるらしい。


 あ、今更だけど、領都のここって、ネレソールというそうな。


「一度デンセットに戻るか?」

「いえ、ここから直接向かいます」

「まさか、歩いて!?」

「それこそまさか」


 あれ? フォックさんにはほうき、見せた事なかったっけ? まあいっか。


 渋るフォックさんを先に帰して、人目のないところを探してほうきに乗った。さあ、山までひとっ飛び。


 コーキアン領は山と平地がほどよくある領地らしい。山は木材や鉱物資源の他に、魔獣資源も豊富だから領は潤っているという話。


 でも、魔獣資源は危険との隣り合わせだからね。あんまりいいとも言えない感じ。


 まあ、出てきたら当然狩りますけど。どうせ出てくるなら、おいしい魔獣がいいなあ。虫系はいりません。本当にいりません。


 虫除けの薬か何か、ないかな。検索先生で調べたら、あった。その名も「虫嫌い」って草があるそうな。


 これを煎じた汁が効果あるんだって。ちょっと独特の臭みがあるそうだけど、その臭いで虫を遠ざけるそうだ。


 よし、今度作ってみよう。




 飛ぶ事約三十分。あれかな? え……本当にあれ? かなり高い山なんだけど。


 てっきりこう、平地にこんもり出来る里山みたいなのを想像していたら、がっつり山でしたって感じ。本格登山とか出来そう。


 検索先生で、領主様のお城で見せてもらった地図と照合。あ、間違いないわ。あそこだ。


 ほうきに乗ったまま、一気に頂上まで行く。これ、標高どのくらいだろう……あ、約二千五百メートルですかそうですか。


 上から見る山は、とっても綺麗……って、そうじゃない、見に来たわけじゃないんだよ。


 そろそろ冬にさしかかる頃だからか、山頂の方はもう雪が降ってる。ほうきの周囲には結界が張ってあるから、寒さも悪天候も問題なしだけど。


 さて、この山のどこにどんな資源があるのか。調べるのは検索先生にお願いだね。


 さすがに大きいからか、丸ごとスキャンには時間がかかった。その結果、石材に使える火山岩と、金鉱脈、カオリン、それと……


「温泉ですと!?」


 検索先生からの返答には、本当にそう書いてある。マジで? ここで天然温泉を見つけるとは!


 領主様的には、石材と金鉱脈がありがたいだろうなあ。カオリンって、そういえば何? 教えて! 検索先生。


 何々、カオリンはその名の通り、カオリン鉱物を主成分とする粘土で、磁器の原材料の一つとなります? そうなの!?


 という事は、あんなお皿やこんなカップが作れるんだ……


 こっちの食器って、庶民は木製、王侯貴族は銀食器が中心なんだよね。陶磁器は、そういえば見た事ないわ。


 これは、ちょっといいかも。


 と言うわけで、検索先生の指示の元、石材とカオリン、それと石英を必要分採取。後は紙に金鉱脈の場所を記して……って、紙は出しちゃだめってじいちゃんに言われたっけ。


 石材掘るのに伐採した木があるから、それを魔法で乾燥させてカット。小学校の頃使っていた画板サイズの板を作成して、そこに場所を記した。


 さて、じゃあ砦に戻って……の前に、もう一回領主様のところに行かなきゃダメかな……


 いいや、フォックさんに頼んじゃえ。

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