第83話 どれにしようかな?

 さて、木材と羊毛は揃った。石灰石とか他の諸々の素材はノワールを見つけた山で採取済み。


 石材も石切場から直接買ったし、あとは窓素材のドラゴンの鱗。本当は骨もほしいところだけど、そうするとドラゴンを倒さないといけないからね。


 ドラゴンは神馬の友達だっていうし、相当強いみたいだから、戦わなくて済むならその方がいい。


「うーん……」

「何を唸っておるんじゃ?」

「未だにどんな形がいいか、決まらなくて……」


 羊毛が手に入ったので、絨毯を自作するのは何とかなる。検索先生で作り方は調べたし、魔法で時短が出来るから。


 木材も手に入ったので、小屋……というか、空飛ぶ家くらいは作れそう。作り方は検索先生以下同文。


 空飛ぶ馬車でもいいんだけど、それだと寝る場所とかがねー。


 選択肢はあれこれあるんだけど、どれもいまいちって感じ。どうしようか?


 考え込んでいたら、じいちゃんが提案してきた。


「お主の世界には、空を飛ぶ乗り物はないんかの?」

「えー? あるよー? それこそたくさん……あ!」


 閃いた!! そうだよ、この世界の基準で考えるから悩むんだよ。地球世界なら、いくらでも参考に出来るものがあるじゃないか!


 そうと決まったら、検索先生に相談!




 あれこれ調べていて、速度は出ないけど居住性は良さげなものを見つけた。

「という訳で、作るのは飛行船に決定ー」

「何じゃ? そのひこうせん……というのは」


 ふっふっふ、いい質問ですねえ、じいちゃん。


 って、ちょっと! いつの間にブランシュとノワールを膝に乗せてるのよ! ちょっと目を離した隙に!


 ブランシュもノワールも、じいちゃんに撫でられてぐでーっと溶けてるし! 悔しいいいいいい。


 おっと、それはいいとして。


「飛行船とは、こんな感じの乗り物でーす」


 イメージ画像を空間表示にしてじいちゃんに見せる。実際に作る場合、ここまで上部を大きくする事はないと思うけど。


「この下の部分に乗って、浮かせて進むんだよ」

「ふむ。それなら、上の部分はいらないんじゃないかい?」


 う……それはそうなんだけど、これはこういう形の乗り物なんだから、なくちゃダメなの!


 結局「こういうものだから」と言って押し切った。どのみち作るのは私だもんね。


 さー、そうと決まったら、妖霊樹を乾燥させて板材にして、ちゃっちゃと作っちゃおうか。


 検索先生で作り方を調べていたら、じいちゃんから提案があった。


「そのひこうせん……か? わしじゃ作れんかのう?」

「え? いや、検索先生が呈示した設計図通りに作れば、じいちゃんでもいけると思うけど……」

「よし、なら飛行船作りはわしが請け負おう。その間、お主は少し砦の修繕を始めておれ」


 そっか。窓の素材手に入れる前に、出来るところまでやろうかと思っていたしね。


 じいちゃんからの申し出はありがたかったので、早速検索先生に出してもらった設計図を紙に写して出す。


 ちなみに、この紙は妖霊樹の端材で作ってみた。紙って、木から作れるよなーって。


 出してみたら、じいちゃんにびっくりされた。


「何じゃこりゃあああ!?」

「え? 紙。木とか草とか、植物の繊維で作るものだよ」


 あれ? 今まで出した事、なかったっけ?


 首を傾げていたら、じいちゃんが深い溜息と共に言った。


「ユーリカ、いやサーリよ。これは、絶対に余所で出すでないぞ?」

「う、うん」


 出す機会もないから、多分大丈夫。うん、多分。

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