第78話 二転三転するアイデア

 絨毯買って空飛ぶ絨毯作っちゃうぞ! とわくわくしていた分、買えなかった落ち込みは半端ない。


 がっくり肩を落としながら砦への道を行く私に、じいちゃんが慰めの言葉をくれる。


「そう落ち込むでない。あれじゃ、素材を集めて魔法で作れば良かろう」

「でも、これで確実にドラゴンの元へ行く日が遠のく……」

「ドラゴンは逃げんよ。神馬も言っていたではないか。ドラゴンは早々島から出ないと」


 だから、好物の果実も食べられる機会が少ない。それを交渉材料にすればいいと言っていたっけ。


 早いところ、砦の修繕に取り組みたいのに。


 落ち込む私に、じいちゃんがまた提案してきた。


「砦もな、今手を付けられるところからやっておけばいいんじゃよ。窓の素材がないから、修繕に移れないという事もあるまいて」


 それもそうか。石材はある程度あるんだし、やれる事はあるはず。


 よし、何だかやる気が出てきた。


「じゃあ、まずは素材を集めに行ってこようかな。じいちゃんは留守番?」

「いや、わしも行くぞい。何ぞ面白いものがあれば、わしも制作に励んでもいいんじゃし」


 じいちゃんも、あれこれ作るの得意だもんね。この人、こう見えて手先が器用なんだよなあ。


 私は不器用なのわかっているので、全部魔法頼りです、はい。


 それよりも、問題は行って帰ってくる手段だ。


「ほうきで行くけど、大丈夫?」


 じいちゃん、土ゴーレムの馬で下を走るのかな?


 そう思ってたら、意外な言葉が返ってきた。


「それはほれ、魔大陸に入る際に使った手があったじゃろう」

「ああ、あれか!」


 魔大陸の南側って、もの凄く急な崖になってるんだ。そこを回避して上陸しようとすると、邪神の瘴気攻撃をもろに受けるんで、上陸そのものが困難だったのよ。


 で、最終的に使った手が、ほうきに籠をぶら下げて、じいちゃんを籠に入れて、私はほうきにまたがって崖を超えるってもの。


 その時の籠を、今回も使おうって訳だ。


 ちなみに、魔大陸に上陸したのは私とじいちゃんだけ。ヘデック達ローデンの兵士達は、北ラウェニアの港町でお留守番だった。


 ここよりもっと東側の国だったなあ。あの国、何て名前だったっけ?


 それはともかく、私は亜空間収納からあの時使った籠を取り出した。うん、大丈夫。ちゃんと使えそう。


 これとほうきで空を行けば、ドラゴンの島まで行けるんじゃないかな。いっそその方が……


「ほうきでドラゴンの元まで行こうとか、思ってないじゃろうな?」


 ぎく。じいちゃんて、こういう時凄く勘がいいよね?


「ここから南ラウェニア大陸ですら、かなりの距離があるとわかっておろうに。長時間空を行くのなら、居住性は重要じゃぞ?」

「う……わかってます」


 ほうきでローデンからダガードに来るまでも、途中で何度も休憩入れたもんなあ。


 ドラゴンの島へ行く乗り物には、寝ている間にも自動で飛んでいられる機能をぜひつけたい。


 いっそ、小屋でも作ってそれを飛ばそうか? 何か、そっちの方がいい気がしてきた。


 空飛ぶ小屋。何か、おとぎ話に出てきそう。

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