第75話 試行錯誤

 神馬を見送ってから、ポイント間移動で魔大陸に行き、果実をたくさん取ってくる。


 実っていた果実、半分くらい収穫しちゃったけど、これも次に来たら元に戻ってるんだろうなあ。


 本当、不思議な木だよ。


 砦に戻ったら、迎撃システムの量産。ブランシュとノワールは、二匹で何やら遊んでる。


 じいちゃんは、自分のテントで何やらやってるみたい。じいちゃんのテントは、私のテントの隣にある。


 じいちゃんはお風呂は持っていないので、こっちのを貸してる状態。お湯を入れるのも抜くのも掃除も、全部魔法で出来るから面倒なくていいよね。


 あ、そうだ。ドラゴンの島に行くんだから、ほうき以外の乗り物、考えた方がいいかな。


 いやあ、ローデンからここまで来る時は一人だったからいいけど、今はブランシュもノワールもじいちゃんもいるからね。


 一応、確認しておこうかな。


「じいちゃーん」

「何じゃー?」

「ドラゴンのところ、じいちゃんも行くよねー?」

「当たり前じゃー」


 テント越しだから、ちょっと大きな声を出せば通るのは楽ちん。


 で、じいちゃん達もまとめて乗れるような乗り物をだね。考えないといかんのだよ。


 飛行機型にするかな……でも、素材と作成に時間がかかりそう。一番簡単なのは、空飛ぶ絨毯かな?


 ほうきに使ってる術式が使えそうだから、その辺りは考えなくていいか。問題は、速度と広さかな。


 ほうきと違って絨毯なら、大きめのを使えば寝転んでもいけそう。そういうところは、楽だよな。


 ただ、形状からほうき程スピードが出せなくなりそうなのがなー。あ、でも結界の形を工夫すれば、スピードアップが出来るかも?


 うーん、明日にでも、デンセットに行って大きめの絨毯を買ってこようか。


 あ、捕縛用のやつ、まだテストしていなんだった。


「じいちゃーん、ちょっと出てくるねー」

「どこ行くんじゃー?」

「ちょっとテストー」

「てすと? ああ、例の迎撃用機械の試運転か。気をつけてのー」

「行ってきまーす」


 こっちに気づいたブランシュ達が着いてきそうになったけど、じいちゃんの側にいるよう伝えてからほうきで飛び立つ。


 さて、魔獣がいそうなところって、どこだろう?




 砦から西に少し行ったところに、ちょっとした丘……というか、小さな山がある。四つくらい連なっていて、この山間に魔獣が見えた。


「よしよし」


 本来なら、人が来ない場所の魔獣は放置されるんだけど、それだって魔獣が増えても構わないって訳じゃない。


 単に、ここまで人を派遣して討伐するメリットがあまりないってだけ。デンセットは、人手不足でもあるしね。


 さすがに街に近づいてきたら、冒険者を使って討伐するみたいだけど。まあ、だから砦があの状態になっていた訳だよ。


 それはともかく。作った迎撃システムの捕縛用のテストにはうってつけだ。亜空間収納から取り出した捕縛用機械、通称捕縛ボールは全部で八つ。


 通称って言ったって、呼ぶのは私だけなんだけど。……いいんだよ、いちいち迎撃システムだの捕縛用機械だのと言わなくて済むんだから。


 捕縛ボールは、ふよふよよ山間に下りていき、魔獣を捕縛領域に捕らえた。


 さあ、ここからが肝心なところ。うまく動いてよ。


 捕縛ボールは魔獣から一定の距離で浮遊すると、くるりと一回転する。そこからは、あっという間だった。


 捕縛ボールに仕込んだ目の細かい網で、魔獣は全て捕縛完了。あの網、実はスライム素材の余りを使ってる。


 スライムって、形状を決めた後に一定量の魔力を流すと形が固定して堅さも決まるのだ。


 で、糸状に伸ばしたスライムに魔力を流し、堅さは中程度、強度を上げて形状を固定した。


 それを網状に編んで、ボールの中に仕込んだって訳。物理網以外にも、魔力の網も入れてあるので、魔獣のタイプに合わせて選択可能なのだ。


 さて、捕縛した魔獣はまだ生きているので、このままデンセットや砦に持って帰る訳にもいかない。


 大型のウサギなので、肉はおいしかろう。と言うわけで、ここで首を落として亜空間収納へポイッと。


 今夜はウサギシチューを作ってみようかな?

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