第67話 魔大陸の現在
上空から見る魔大陸は、二年前に再封印で訪れた時とは大分変わっている。
「綺麗になったな……」
どこまでも広がる森、その中を流れる川、一番奥には高い山がそびえている。
ここが、二年前までは邪神が棲む場所だった。あの時は、大陸中瘴気で酷い状態だったけど。
邪神を浄化するのに、大陸ごと浄化するのが一番効率的だと感じたから、そのまま持てる力を振り絞って浄化したっけ。
そして後でじいちゃんに大目玉を食らったんだった……あれは今思い出しても怖かったわー。
大陸ごと浄化したからか、土地や植物、水にしみこんでいた全ての瘴気を浄化出来たらしい。
あの時は急激な浄化の影響で、大地は更地になり植物は消え水も涸れていた。それが、綺麗になっちゃって。
つい昨日、神馬の為に果実を取りに来た時には、一体どこに来たのかって驚いたくらい。
ほうきに乗ったまま、最奥の山を目指す。あの山の麓に、邪神がいた。うんと昔に封印されていた地が、ここだったらしい。
その邪神は、今はもういない。じいちゃんと私だけの秘密だけど、私は邪神を再封印したんじゃない。完全に浄化して消し去ったんだ。
だから、もう二度と邪神は復活しない。だっていないんだから。
邪神が封印されていた場所には、一本の大きな木が生えている。神馬が好む果実は、この木に実っているんだ。
この木だけは、浄化のすぐ後に生えてきた。いきなり生えるから、魔物の類いかと驚いたよ。
でも、かすかに神気を感じる木だったから、魔物じゃないってわかったんだっけ。実も、生えた時にはもう実っていたんだよなあ。
この木は、あの時と何にも変わらない。あ、でもちょっと大きくなったかな? それくらいか。
これ、取るにはほうきに乗ったままの方がいいな。手で取ると果実を傷めかねないので、魔法で取る。
取ったその場で亜空間収納へ入れておくと、新鮮なまま保存が出来るって訳。これ、神馬への報酬だからね。
果実を取り終わっても、少しだけその場に残った。
「……」
邪神を浄化した時、死体のようなものは何も残らなかった。実体を持っていなかったのかもしれない。
あれは、瘴気の塊のようなものだったのかも。
その後、少し魔大陸を見て回って、それから帰る。砦では、じいちゃん達が出迎えてくれた。
「ただいまー」
「お帰り」
「ピピイ」
帰ってきて、お帰りって言われるの、いいなあ。にまにましながら戻ったら、じいちゃんに不審そうに見られた。何で?
「果実は無事取れたかの?」
「うん、ばっちり」
「先日取ったばかりなんだがのう……」
「まあ、あの木だから」
じいちゃんとは、これで通じる。不思議な神気を感じる木だけど、今は考えなくていいや。
とりあえず、取ってきた報酬の果実、また塔の前に広げておけばいいかな?
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