第66話 報酬はおいしい?
「それで、我を招いた理由はなんだ?」
あの後、ふらふらしながらも神馬は用意した果実を全部平らげ、じいちゃんに話を聞いている。
それにしても、凄い食欲だなあ。結構な数あったのに、あれ。
「うむ、実はな。黒い天馬の仔馬に、飛び方を教えてやってほしいのだよ」
「ほう、黒い天馬の仔馬とな」
あれ? じいちゃんは堕天馬とは言わないんだ。まあ、あれは人が勝手につけた呼び名みたいだけど。
「ユ……サーリ、あの子をここへ」
「はーい」
じいちゃん、今ユーリカって言いかけたな? まあ、じいちゃんが私の名を呼ぶ事はあんまりないから、いっか。
ノワールは私の足下にいたから、抱っこして神馬の元へと連れて行った。
「この子です」
「ほう、なるほどな。まだ生まれて数日といったところか」
「そうです」
「ふむ、ならばまだ間に合うであろう。これ、子よ」
「ノワール。この子の名前はノワールというの」
「そうか。で、子よ。そちは飛びたいのか?」
ガン無視したな、神馬。これは神子を穢す事にはならないのかな? ……神罰が下らないから、ならないらしい。
ノワールは、神馬を怖がっていたけれど、問いかけには答える。
「ノワール、飛ビタイ」
「ふむ。良かろう。我が教えてやろうではないか」
「本当に!? ありがとう!!」
神馬、いいヤツ! いや、いい馬って言った方がいいのかな?
「それでは報酬だが」
「いくら? さすがに一千万ブールとか言われたら困るけど」
支払えるけどさ。でも、講習料としては高すぎじゃね? って思うのよ。
ドレスの売却金もあるし、何より盗賊関連の報償金とか賞金とかお宝のあれこれとかで、結構な小金持ちになってるから。
でも、出来ればこれは街に落としたいお金なんだ。だから、あんまり報酬が高いようなら値段交渉しようと思っていたんだけど。
「人間が使うものなどいらん。我は先程の果実を所望する」
あー、なるほどー。確かに、神馬がお金持っていても、使いどころがないよねー。
つか、本当にあの果実が好きなんだな!
その後、神馬はノワールを連れて空へと飛び立った。ここから少し行ったところにある山の上が、飛ぶには凄くいい場所なんだって。
そこで訓練して、砦周辺でも飛べるようになれば大丈夫だそうだ。頑張れ、ノワール。
で、残った私達はどうするかというと。
「じゃあ、報酬の果実を取りに行ってきます」
「おお、気をつけるんじゃぞ」
「ピィピィ」
「ブランシュ、じいちゃんといい子で待っててね」
じいちゃんとブランシュにお留守番をお願いして、ほうきでちょいとひとっ飛び。
実は神馬が大好物のあの果実、魔大陸にしかないんだよね……
なので、このままいっちょ魔大陸まで行って、果実を取ってきます。ほうきなら往復二時間も見れば十分だし。
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