第65話 神馬
攻撃用、防御用は無事テスト完了。攻撃用はちょっと砦から出たところで小さな魔獣を退治させ、防御用は私の攻撃を受けさせた。
あやうく魔法で攻撃した際に防御用を壊しそうになったけど、これで耐久値もわかったので、よしとする。
後は捕縛のテストかあ。どうしようかな?
「また魔獣を使ってテストするかなあ……ん?」
砦の入り口で考え込んでいた私の視界の端に、何かきらきら光るものが映った。何あれ?
そのきらきらは、直視できないくらいまぶしいもので、手をかざしても見るのは厳しい。
そのきらきらが、砦に下りてくる。
「あれ……まさか……」
本当に、呼び出せたんだろうか?
捕縛用のテストを放り出して砦の一番奥まで駆けつけると、先程のキラキラがじいちゃんと一緒にいた。
やっぱり、あれが神馬だったんだ。
「すっごい」
神馬は白い馬なんだけど、尻尾とたてがみがすっごく長い。たてがみなんて、一本一メートル以上ありそう。
そんなたてがみと尻尾を優雅にふわふわとさせて地面につかないようにさせてる。
「おお、戻ったか」
「じいちゃん……もしかして……」
「うむ。こっちが神馬じゃ。名前は……そういや、名前は聞いた事がなかったな?」
「我に名などいらぬ。神馬は我一体故」
ふわー、何か凄いなあ。普通の馬に比べても、かなり大きな神馬を見上げていると、神馬の視線がこっちに向いた。
「これは、何だ?」
これって、私の事?
「この者は、異世界より召喚されし神子殿じゃよ」
「何!? 神子だと!?」
じいちゃんの紹介に、神馬が驚いている。そんなに驚くような事? まあ、いきなり目の前に「神子です」とかいう人がいたら、そりゃ驚くか。
でも、神馬の驚きポイントは別にあった。
「このようにさえない小娘が、神子だと申すのか!?」
むか。さえなくて悪かったな。どうせ美人に夫を寝取られる程度の小娘ですよ。
そう思った途端、神馬が何かに撃たれたように硬直した後、よろよろとその場に倒れた。
え!? 何があったの!? 驚いてじいちゃんを見ると、じいちゃんも驚いている。
二人して倒れた神馬を見下ろしていたら、まだ足下がしっかりしないのに神馬が立ち上がった。
「一体どうしたんじゃ?」
「……神子を穢す言葉を口にした為に、神罰を食らったのだ。神子よ、我の謝罪を受け入れてはもらえまいか?」
「え? えーと、う、受け入れます」
「感謝する。おかげでこれ以上の神罰を受けずに済む」
えー? 私の事を悪く言うと、神罰が下るの? でも、ローデンの連中には何もなかったんだけど。
首を傾げる私に、神馬が教えてくれた。
「神罰は、神に近い存在にしか下されない。神は人の子の事には関与せぬ故」
なるほど。ローデンの連中は俗で思いっきり神から遠い存在だから、神罰を下す程のものではないと判断されているらしい。
いや、神子も人の子なんだから、人にも神罰下してくれてもいいんですよ? 神様。
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