第63話 下準備
ただいま、じいちゃんに言われてノワールに飛び方を教えてくれる先生を招く為の準備中。
にしても、本当にこんなものに釣られるの?
「じいちゃーん、これくらいでいいー?」
「うむ、これだけ広げておけば、ヤツも食いつくじゃろ」
「本当かな……」
砦の一番奥、塔部分のすぐ下辺り一面に、とある果実をたくさん広げている。下には厚手の布を敷いてるので、地面に直接じゃないよ。
何でもこの果実、神馬の大好物なんだって。ちなみに、これはちょっととある場所に行って取ってきた。
どこから、は今は言えない。
「どれくらいで神馬は来るかな?」
「さてのお。言った通り、気まぐれで気分屋じゃから、すぐに来る事もあろうが、二、三日かかるか、それとももっとかは、わしにもわからん」
「うーん」
大好物に惹かれて飛んでくる神馬。大丈夫なのかな、色々と。
唸る私の足下で、ノワールが不安そうだ。
「大丈夫だよ、ノワール。これがダメでも、次の手を探すから。一緒に、そらを飛ぼうね」
「ウン、ノワール、飛ビタイ!」
そうだよねー、もう本能みたいなもので、空を飛びたいよねー。せっかく翼があるんだもん。
ノワールの背中にちゃっかり乗ってるブランシュも、まだまだ小さな翼をパタパタさせてる。
「ピイ、ピイ」
「うん、ブランシュも、一緒に飛ぼうね」
「ピイィィィ」
ちょこまかと動く姿が可愛い。もちろん、ブランシュを乗せてるノワールも、もふもふしていて可愛い。
あー、私の癒やしの源。
「さて、仕掛けはこれでいいとして、待ってる間はどうする?」
「うーん。砦の修繕をするのもどうかと思うし……あ! 迎撃システム構築する!」
「げいげき、しすてむ? またおかしなものを」
酷い! そんな顔をしかめる事、ないじゃないか!
「おかしくないよ! 私が留守にしている間、砦に変な人達が入ってきたら困るじゃない。それに、ブランシュとノワールがお留守番する時もあるんだから、不審者対策は必要だよ」
大事なブランシュとノワールは狙われやすい子達だし、砦だって見ず知らずのならず者なんかに荒らされたくない。
セキュリティは万全にしておかなきゃ!
鼻息荒く説明する私に、じいちゃんは引き気味だ。
「まあ、とんでもない代物でなければいいかのう……」
「じいちゃんの中の私は、一体どういう人なんだろう?」
「目を離すととんでもないしろもんばっかり作る困った弟子、じゃな」
酷くない!? ねえ、酷くない!?
睨んでも、じいちゃんは気にした風もないし。理不尽。
「おおそうじゃ。この果実は雨に濡れると味が落ちる。この上に、雨よけをつけてくれんか?」
「結界でいい?」
「……普通は大型のテントか何かにするんじゃがのう」
「えー、面倒くさい。結界の方が楽だし」
「そんな事を言うのは、お主くらいじゃ」
そんな事ないよー。誰だって魔法の方が楽だって思うって。
……思うよね?
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