第61話 幻獣の王
異世界に神子として召喚されて、邪神を完全浄化して世界を救い、その旅に同行したローデンの第三王子ヘデックと結婚したのが二年前。
あの時はこの幸せがいつまでも続くんだと、信じて疑わなかったのに。
「現実は非情よね」
「まあ、そうだの」
「じいちゃん、慰めの言葉くらい言ってよ!」
「言葉ならいくらでも言えるがの。事実までは覆せんぞ?」
反論出来ない。
でも本当、非情だよね。ここに来てまだ二十日かそこらって事は、あの最後の夜会からもそれくらいしか経っていないって事だ。
ちょっとしんみりしたら、じいちゃんがいきなり私の頭をなでた。
「……何?」
「いや、今までよく頑張ったと思っての」
「じいちゃん……」
「お主の事じゃ。泣いてる姿なんぞ、あいつらに見せたくないと我慢しっぱなしじゃったろ。今ならわし以外誰もおらん。好きに泣いてええぞ」
「……ブランシュとノワールがいるもん」
「あの二匹とて、お主が泣いたら慰めはしても、笑いはせんよ」
あー、もう。どうしてこういう時にそういう優しい事言うかな、じいちゃんは。
しわしわの、優しくて温かい手。この手に、あの旅の時もたくさんお世話になったな。
何故か、ヘデックの前では泣いちゃダメだって思ってたから。でも、じいちゃんにはよく泣きついていたっけ。
思い出したら、もう止まらない。
「ふえ……うう……うわああああああああああ!」
まるで子供みたいに、その場でわあわあ泣き出した。でも、じいちゃんもブランシュもノワールも、何も言わない。
ただずっと、私の側にいてくれた。
やっと落ち着いた頃には、日が傾いた頃だ。いやー、よく泣いたわ。おかげで目元が痛い。後で冷やしておかないと、腫れるな。
私が泣き止んだのを見たじいちゃんは、今更な事を聞いてきた。
「で? この二匹はどうしたんじゃ?」
「今頃? ブランシュ、こっちの白いグリフォンは、石切場で出会ったの。親グリフォンが石切場から動かなくて、作業する人達から退治してくれって依頼が出てたらしくて」
「無謀な依頼を出す者もいたもんじゃ。それで? 倒した親グリフォンの代わりに育てておるのか?」
「違うよ! 話してたら、卵の瘴気を抜く為にその場にいるって言うから、だったらここで浄化するよって言って、卵を浄化したら、この子が生まれてきたの。で、この子の希望で、私のところに来るって事になったんだ」
「ふむう。卵が瘴気に侵され、それをお主が浄化した……と」
「うん」
じいちゃんが何やら考え込んでる。何か、変な事言ったかな?
「それが原因かもしれんな」
「何が?」
「色じゃよ。お主は知らんかもしれんが、白いグリフォンは他の全てのグリフォンを統べる王になる個体だと言われておる」
「え!?」
ブランシュが、グリフォンの王!? びっくりする私に、じいちゃんが語って聞かせてくれた。
「伝説みたいなものじゃがの。グリフォンの体色が白くなるのは、神の恩寵を受けたからだ、という言い伝えがあるんじゃ。グリフォンは幻獣、故に人より神聖なものに敏感じゃ。神の恩寵を受けしグリフォンならば、他のグリフォンを従える事もたやすかろうて」
マジかー。そういや、フォックさん達も白いグリフォンは珍しいって言っていたっけ。
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