第54話 石、どこお?

 砦からほうきに乗って、デンセットへ。本日二匹は結界の中でお留守番。行き先がデンセットって聞いたら、二匹とも行かないって言うんだもん……


 街の門の手前でほうきを下りて、徒歩で門をくぐる。


「よう、サーリ。今日も依頼を受けに来たのか?」

「違うよー。石材を買いに来たんだー」

「石材ぃ? ……ああ、砦、本当に作り直すのか」

「作り直すっていうか……うん、まあそんな感じ。じゃあね」

「ああ、気をつけていけよ」


 門番さんは、例の盗賊何とか一家を捕まえた時に、砦まで身柄を引き取りに来てくれた人達にいた人。


 他にも街中で警備に当たってる衛兵さんや、組合の冒険者達も手伝ってくれたらしい。


 ……これ、どっかで報償金でも使って、手伝ってくれた人達に奢った方がいいかな。後でフォックさんにでも相談してみよう。


 とりあえず、今日は石材!




 街の中央を走る大通り沿いには、大きめの店が建ち並ぶ。石材を扱ってる店って、どこだろ?


 大通りの店には、どこもどんな店か一目でわかる看板が出てるから、それを見ながら歩く。……石材の看板って、どんなんだ?


 端から端まで歩いてみたけど、石材を扱ってる店が見つからない。うーんと悩んでいると、後ろから声をかけられた。


「サーリ、こんなところで何をしてるの? 買い物?」

「ローメニカさん!」


 後ろに立っていたのは、冒険者組合の職員ローメニカさん。そうだ! 組合職員なら、石材を扱ってる店を知ってるかもしれない!


「ローメニカさん! 石材を扱ってる店、知りませんか!?」

「石材? それなら、店じゃなくて工房じゃないかしら」

「工房?」


 どうやら、石材を買うのは職人が主なので、職人が集まる工房街に石材を扱うところがあるらしい。


「場所は教えられるけど……案内、しようか?」

「よろしくお願いします!!」




 連れられて来たのは、街の北西側。この辺りに工房が集まっていて、いつしか工房街と呼ばれるようになったそうな。


「ここよ」

「へー」


 中でも、石造りでごつい外見の建物があり、そこが石材を扱っている工房だった。


 石材を職人に卸すだけでなく、自分のところで建物を建てたり石像を作ったりするんだって。


 ローメニカさんが、工房のご主人に紹介してくれるっていうので、同行してもらった。


「こんにちはー」

「おーう、らっしゃーい」


 店の扉は開けっぱなしで、土間が奥まで続いてる。その奥から、声と共に大柄で筋肉質なおじさんが出てきた。


「おう、ローメニカの嬢ちゃんじゃねえか。フォックの旦那は元気かい?」

「元気ですけど、最近書類仕事が増えて愚痴られます」

「はっはっは。あの旦那も、また現場に戻りてえんじゃねえか?」

「もう年なんだから、そろそろ諦めつけてほしいんですよねえ」


 どうやら、ローメニカさんとここのご主人は知り合いらしい。それにしても、フォックさんの書類仕事が増えたって、まさかあの何とか一家のせいじゃないよね?

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