第48話 お出迎えー

 で、何故か来るというジンド様のお出迎え要員に、加えられました。強制的に。

 理不尽!


「こら、サーリ。もう少し愛想をだな」

「無理です」

「せめて笑顔――」

「無理ですううう!」


 フォックさんが頭抱えてるけど、知らないやい! 帰るっていう私を無理矢理ここに立たせてるんだから。フォックさんが悪い。


 場所は組合の前。ここでお出迎えするんだと。ぶすっとしていると、向こうの方から声が響いた。


「来たぞお!」


 その声から少しして、組合の前に豪華な馬車が止まる。さすが領主の乗る馬車。手の込んだ装飾が施されてるなあ。


「うむ、出迎えご苦労」


 馬車に見とれていたら、いつのまにか領主様が目の前に来ていた。彼の後ろには、あの銀髪の人もいる。


 あ、そうだ、挨拶挨拶。


「えーと、いらっしゃいませ」


 つい、日本の頃の癖が出てお辞儀してしまった。目の前の領主様は一瞬ぽかんとした顔をしたけれど、次には大笑いしてる。


「はっはっは。サーリはなかなかに面白い娘よのお!」

「も、申し訳ありません! こら、サーリ!」


 フォックさんが怒ってるけど、怒るなら私を強引にこの場に立たせた自分にしてよ。


 おかしいなあ、冒険者って、もっと自由な職業だと思ったんだけど。




 結局そのまま、組合長室までフォックさんに連行された。組合長室には、領主様、銀髪さん、フォックさん、ローメニカさん、領主様の護衛さん四名、知らない男性三名、それに私。


 そう狭くない部屋だけど、さすがにこれだけ人がいると狭く感じる。


「それで? 悪名高きベコエイド一家を捕縛したと聞いたが?」

「はい。全員、牢屋に放り込んであります。無論、結託出来ないよう別々の房に入れていますので、ご安心を」

「ふむ……本当に捕縛出来たとはなあ……」


 何だか、領主様の視線がこっちに向いてる。あれ? 室内にいる人、全員こっち見てない?


「さて、サーリよ。どうやってあの悪名高き盗賊団を捕まえたか、話してはくれまいか?」

「え? えーと、魔法でちょちょいと……」

「魔法で、ちょちょいと?」

「そう……です……」


 詳しい術式の事を説明出来ないのは、じいちゃんに止められてるから。別にただ約束しただけだから、守らなくてもいいんだろうけど、なんとなくじいちゃんの言う事に従った方がいいって思うから。


 あー、またしてもみんなの視線が痛い。


 しんと静まりかえる重い空気の中、誰かが咳払いをした。あ、銀髪の人だ。


「ふむ。まあ良い。大事なのは、ベコエイド一家を潰せたという一点にある。方法など、些末な事よ」


 領主様の言葉で、みんなの視線がばらける。あー、良かった。

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