第47話 違う、そうじゃない
真夜中に砦に帰ってきて、盗賊達を全員引き渡した後に寝たら、翌日は寝坊した。
「うう、まだ眠い……」
なのに何故起きたかというと、幻獣二匹にたたき起こされたからです。お腹空いたんだって。まあ、どっちもまだ子供だから、食べ盛りでお腹空くのは当然だよね。でも眠い……
何とか起きて、ブランシュ、ノワールと一緒に朝ご飯。朝から重いものは何なので、パンとスープとジュース、食後にフルーツを少し。
十分ゴージャスだって? いいんだよ、幻獣二匹が食べたがったんだから。
食後は一休みして、そろそろ砦の改修を……と思っていたら、デンセットから人がきた。
「おはよう、サーリ。起きていて良かったわ」
ローメニカさんだ。昨日のお説教がまだ私の中に残っていて、つい腰が引ける。その様子に気づいたのか、彼女が笑った。
「夕べは悪かったわ。でも、サーリはもっと気をつけるべきとは、今も思ってるから」
「う……はい……」
ローメニカさんが、私を心配してくれてるのはわかってるので、反論出来ない。でも、本当に危なくないと思ったから、やったんだけどなあ。
きっとローメニカさんの目には、私は危険を顧みず危ない事に首を突っ込む人間って見えるんだろう。
これでも、邪神再封印の旅の途中、色々と危険な目にはあったから、どこまでがヤバくてどこまでならOKって、見極めくらいは出来るんだけどなあ。
でも、ここでそれを言う訳にもいかないから、おとなしく従っておく。元神子だってバレたら、そっちの方が危険度が高いもん。
「で、これから私と一緒に来てもらうわよ」
「盗賊の件ですか?」
「そう。組合長が頭を抱えてるから、覚悟してね」
何でフォックさんが頭を抱えているのに、私が覚悟しなきゃいけないの?
答え。フォックさんの悩みが、私が見つけた盗賊のお宝にあるから。でもこれ、私は不可抗力ってヤツじゃない?
「じゃあ、見つけない方が良かったとか?」
「そんな訳あるか。見つけてくれたのは感謝してるよ、本当に」
「そう言いながら、どうして睨むんですかあ……」
鋭いまなざしで睨まれながら「感謝してる」って言われても、信じられないよ。
涙目の私に、フォックさんは深い溜息を吐いた。
「ベコエイド一家が、まさかジンド様ゆかりの宝を所持しているとは誰も思わないだろうが……おかげで朝一で領主館へ使いを出す羽目になった」
「ジンド様っていうと……あの時の?」
「そう。ここコーキアンの領主様で、辺境伯閣下だ」
あらー。あのキンキラのジンド様、結構身分の高い人だったんだ……これは、失敗したかも? なるべく高い身分の人には近寄りたくないんだけど。
見てくれを大分いじっているから、私が神子ユーリカだとはわからないと思う。でも、万が一って事があるから。
「で、ジンド様からは宝の確認と、本物だった場合はサーリに特別に報償金をくださるそうだ」
「へ、へえ」
「何だ? 嬉しくないのか?」
ぎく。報償金がもらえるのは嬉しいけど、貴族にはもう会いたくない。
「いえ、ただ、お貴族様には会いたくないなあって」
「ジンド様は、お堅い方ではないから、行儀や作法にはうるさくないぞ?」
「いや、そういう訳ではなくて……」
行儀作法は気にしないよ。というか、一応二年間第三王子妃をやってたんだから、ある程度は身についてるよ。
そうじゃなくて、身元がバレるかもしれないから会いたくないんだってば。でも、そんな事言えないし。
結局、もごもご言うしかない。何か、悔しい。
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