第44話 アジトは通じない……
吐かせると言っても、別に拷問をする訳ではない。
あれだ、自白剤だよ。別に本物を使う訳ではないけれど、酩酊状態に強制的になってもらって、意識がはっきりしないところにつけ込もうっていう算段。
……何か、こっちが悪党みたいな気になってきた。いやいやいや、ここで引いては負けだ。何に負けるのかは知らないけど。
「じゃあ、あなたたちのアジト……はどこですか?」
「アジ……ト……?」
あれ? ちゃんとぐでんぐでんにしてるのに、答えないなあ。もしかして、やり過ぎた?
首を傾げつつも、複数人相手に聞いてみるも、うめくばかりで答えが返ってこない。あれー? これ、どうしようかな。
困っていたら、ローメニカさんが戻ってきた。早。
「お早いお帰りで……」
「ええ、報告は後にして、とりあえず盗賊引き取りだけを頼んできたから……早かったら、ダメなの?」
「いえ……まだアジトの場所を聞き出せてなくて」
しょんぼりとして言ったら、ローメニカさんが首を傾げた。
「あじと……って、何? どこか別の国の言葉?」
あああああああ!! こっちではアジトって通じないのかああ! 通りで盗賊共も困ってた訳だよ……。早く気づけ自分。
気を取り直して、盗賊の基地……というか、本拠地をなんと言えばいいのか尋ねてみると、ローメニカさんが不思議そうな顔でこちらを見てくる。
「ねぐらでいいんじゃないの? というか、他に言い方って、ある?」
ですよねー。そういや、そんな言葉をさっき言っていたっけ……ああ、何だか彼女の視線が痛い……
「えーと、あなたたちのねぐらは、どこですか?」
アジトをねぐらに言い換えたら、割とすらすら答えてくれたよ。場所はここから東にずっと行った先にある、小高い山の洞窟。
彼等のねぐら……本拠地には、盗賊団の親玉とその護衛、他数人が残っていて、本拠地を護っているらしい。
一通り聞き出したら、ローメニカさんから注文がきた。
「サーリ、人を捕まえていないかどうか、聞いてみて」
一瞬、言葉に詰まる。それって、襲った街や村から人質を取っているか、って事だよね?
「わかりました。攫った人達はいますか?」
「いる……近くの村から……女を……」
一瞬、ローメニカさんが息を呑む音が聞こえた気がする。それもそのはず、彼等が捕まえているのが女性なら、別の被害を考えなきゃいけないから。
邪神封印の旅の途中で、盗賊団を一つ壊滅させた事がある。その時に、捕まっていた女性達も助けたんだけど、彼女達の半数近くは住まいのある街や村に帰る前に、自ら命を絶ったと後から聞いた。
捕まっていた間、どんな目に遭わされたのか、想像するだけで吐き気がする。もう少し早く、彼女達を助けられていれば、と何度後悔した事か。
あんな思い、二度としたくない。多分、ローメニカさんも考えは一緒だ。
「ローメニカさん、すみませんが、こいつらここから絶対に逃げられないようにしておくんで、夜が明けたらデンセットまで報せに走ってもらっていいですか?」
「ええ、それはもちろん……サーリ、あなた、何する気?」
「ちょっと、こいつらの本拠地叩いてきます。ついでに、捕まっている人達も助け出してきます」
「一人で行く気!? 無茶よ!!」
「大丈夫です。こいつらを捕まえたのも、私ですよ?」
「それは、そうだけど……」
「大丈夫です! サクッと行ってサクッと捕まえてサクッと助けてきます!!」
「え? さくっとって……ちょ! サーリ!!」
実を言えば、ローメニカさんの了承は必要ないんだよね。結界の方は、盗賊達だけ出入り不可設定に変更して、ほうきで飛び立つ。
あ、ブランシュとノワールも連れてきちゃった。子猫サイズまで小さくなっているから、懐に入れたままだったんだよね。
「ブランシュ、ノワール、このまま砦に残る?」
「ピイイ」
「ノワール 行ク」
どっちも同行するって言うので、そのまま連れて行く事にした。
さあ、本気出して飛ぶぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます