第42話 蟻地獄へご招待
夕飯も食べ終わり、二人と二匹でまったりしていると、ローメニカさんから聞かれた。
「それで? どうやって盗賊団を捕縛するつもり?」
「うーん。続々とここめがけて向かってきてるので、ある程度のところまで来たら逃げられないよう周囲を固めてから、穴に落とそうかと」
「穴? いつのまに掘ったの?」
「これからですよ」
「え?」
「え?」
おかしいなあ、ローメニカさん、私が魔法を使うって知ってるはずなのに。魔力云々で騒いだ時、いたよね?
意味がわからないという顔をする彼女と、首を傾げる私。端から見たら変な絵だろうね、これ。
魔法でやるって補足説明必要なのかー、めんどいなーなんて思っていたら、いきなりブランシュが鳴きだした。
「ピイ! ピイイイ!!」
「うん、来たね」
気づいたんだ、偉いねブランシュ。頭を指先でこしょこしょとなでると、くすぐったそうにする仕草がまた可愛い。
そしたらノワールがやきもち焼いちゃって、私の膝の上にどすんと乗ってきた。もー、可愛いなあー。
二匹といちゃこらしている前で、ローメニカさんが驚いてる。どうでもいいけど、あんまり目を見開くと乾燥しちゃうよ?
「え? まさか……」
「盗賊ですよ。もうちょっと近づいたら、退路を断ちます」
これ、前に魔獣の群れ相手にやった事がある。あの時は、ヘデック達をまくのが大変だったっけ。「襲撃してくる魔獣をこっそり退治しちゃおう作戦」とか馬鹿みたいな名前付けた、作戦とも言えない作戦だった。
一人でなんとか出来るってじいちゃんに言ったら、見栄を張ってると思われたらしくて、だったらやってみろって煽られた結果だったんだよなあ。
本当に目の前で一人で始末しちゃったら、じいちゃんも顎が外れそうな感じで驚いてた。あれ以来、目を離すと非常識な事をやるってレッテル貼られて、何やるにもじいちゃんに申請しないといけなくなって面倒だったわ。
さて、そんな思い出に浸っている間にも、盗賊達は続々と砦目指して集結しつつある。
そんなに集まって大丈夫? 集結したところに爆発系の術式打ち込まれたら一発で終わりだよ?
まあ、今回は中心がここだから、使わないけどさ。
砦の周辺には、既に結界が張ってあるから問題ない。後はもう少し盗賊達が近づいたところで、彼等の背後にもう一つ結界を張ればいいだけだ。
上から見たら、ドーナツ状に結界を張る事になる。穴の空いた部分が砦、食べる部分が盗賊達。
ローメニカさんの前だけど、地図を空間投影して盗賊達も点で表示させる。
「サーリ、これは?」
「私独自の魔法で地図って言います。この点の一つ一つが盗賊です。ここが砦、これから、盗賊達の背後に砦を中心とした結界をもう一つ張ります。これで、彼等は逃げられません」
本来は、結界は中からは入れるようにするんだけど、外側に張るのは逆にした結界なので、外からは入れるけど、中からは出られないようになっている。
何だっけ? こう、入ったら最後出られないタイプの罠……あ! 蟻地獄! あんな感じ。別にすり鉢状じゃないけど。
……ん? 落とす穴、それをモデルにすればいいんじゃね? 深さは5メートルくらいにして、頑張れば這い上がれそうに見えるけど、壁がどんどん崩れて結局上がれない的な。
壁が崩れると最悪生き埋めになるので、そこはちょっと調整して……うん、出来た。その名も術式「蟻地獄」。
今後使わずにすみますように。
準備が出来たところで、一番外側の結界を張る。多分、盗賊達は気づいていないんだろうなあ。
「今、結界を張った?」
「ええ。わかりました?」
「私、少しだけど魔力があるのよ。だから、近場で術式が発動した時にはわかるの」
……それは、また別のスキルじゃないかな。魔力があったって、術式の発動に気づく人っていないよ? 少なくとも、私は初めて聞いた。
あー、こんな時、じいちゃんがいればなあ。あの人、博識だからローメニカさんの能力に関しても、きっと知ってるはず。
本当、何処行っちゃったんだろう。
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