第41話 嵐の前
結局縛り上げた十人は、警備部隊の人達が引き取ってくれる事になった。彼等はローメニカさんが到着し次第、街に戻るという。部隊の一人が、街まで彼女を呼びに行ってくれるらしい。
「お手数おかけします」
ぺこりと頭を下げたら、何だか驚かれた。何故?
「冒険者なんてやってるのはな、礼儀知らずで無教養って言われてるんだよ」
「あー、なるほどー」
確かに、血の気の多い以下略。でも、礼儀とか教養って、先天的なものでなくて、後天的なものだからね。努力すれば何とかなる。はず。
もっとも、あの筋肉自慢の人達が、おとなしく礼儀や教養を身につける努力をするかどうかは謎だけど。
ローメニカさんは、すぐに来た。馬で駆けるつけるって、こういう事を言うんだな……凄い速度でした。
「お待たせしました!」
「いや、こんな時間に悪いな」
「大丈夫ですよ、一食くらい抜いたって死にません」
あ、そうか。そろそろ夕飯の時間なのに、食べずに来てくれたんだ。
「良かったら、夕飯一緒にいかがですか?」
「え? でも……」
「店で買ったものですけど。それで良ければ」
まだ砦に手を入れていないから、手料理はお預けなんだよね。ローメニカさんはフォックさんと何やら小声でやり取りをした後、にっこり笑った。
「ありがとう、ぜひ、ご相伴させてちょうだい」
「はい!」
ローメニカさんに出すなら、くびれ辺りの街オパフか、そこからもうちょっと北のゴノートで仕入れた料理を出そうか。
この世界の人って、国から国へ渡る事ってあまりないっていうから。観光旅行で他国に行くなんて、邪神がいる間は確かに無理だったろう。
でも、もう邪神の脅威はない。とはいえ、ダガードは復興で忙しい国だから、みんな仕事仕事で旅行に行ってる暇なんてない。
だから、余所の国の料理は喜んでもらえるんじゃないかなー?
……なんて思っていた日が、私にもありました。
「サーリ、これもダメ」
「ええー?」
「フォックさんに気をつけるように言われてるでしょ? どう見てもこの国じゃない国の料理が、どうして湯気を立てて出てくるのよ。どうやってここまで持ってきたの?」
「あう……」
亜空間収納に関しては、じいちゃんから誰にも言うなって言われてるから、言う訳にいかないのに……
「それにこれ、コーヒーよね? うちの街では扱っていないはずだけど。どこで手に入れたの?」
「えっと、前にいた街で買いました……」
「それで? いつ煎れたのかしら? まだ湯気が立って今煎れたばかりのようだけど」
「それは……」
「ここ、竈も暖炉も何もないわよね?」
「あうう……」
「……サーリ。もう一回、フォックさんが言っていた事、復唱しましょうか」
うええええん。
お説教から始まった夕食だけど、ローメニカさんには満足してもらえたらしい。
こっそり「お金払うから、私の分も買ってきてくれない?」って頼まれちゃった。
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