第40話 何か引っかかってました
街に戻ってフォックさんに事情を説明し、砦まで不審者を引き取りに来てもらう事になった。
「いっそ、戻るときに運んでくれば良かった」
「やめろ! 絶対にやるんじゃないぞ!? やり過ぎるなって言っただろ!」
「う、うん……」
あれえ? 今、フォックさんとじいちゃんが重なって見えたんだけど……気のせいだよね?
縛り上げているのは十人だから、フォックさんだけでなく、街の警備部隊からも人が来た。不審者が盗賊だった場合、捕まえるのは彼等の仕事らしい。
街から馬で砦に向かう。私はほうきを出そうと思ったら、フォックさんに怒られて彼の馬に乗せられた。解せぬ。
不審者達は、砦の入り口近くに転がしてある。結界を張っておいたから、逃亡も出来ないし仲間が連れて行く事も出来ない。
それを見たみんなの視線がちょっと痛かったけど、気にしない。特にフォックさんからの色々な感情が交じった視線が痛いわ……
視線を逸らしていたら、不審者を調べていた警備部隊の人が声を上げた。
「こいつら……ベコエイド一家じゃないか!」
べこえいどいっか? とは何ぞ? 首を傾げていたら、フォックさんが教えてくれた。この辺りを荒らし回っている、大きな盗賊団なんだって。
「あの一家が十人だけ捕まるなんて、おかしいぞ」
「こいつらは斥候だ。おそらく、近くに本隊がいるぞ」
ん? って事は、こいつら、私の砦を襲撃する為に下見しに来たって訳? 何か腹立つ。盗賊は嫌いだけど、この砦に目を付けたのがさらに気に入らない。
「フォックさん、その盗賊団、潰してもいいんだよね?」
「そりゃ、賞金首だからな。死体でも金が出るくらい悪辣な連中だ……って、まさか、一人でやるつもりか!?」
「うん。他に人がいたら、ちょっと……」
はっきり邪魔とか言ったら、悪いよね? そんな思いで濁したけど、フォックさんには通じたらしい。
「……一応、警備の者をこちらからも出そう」
「あ、それはいらないから、街まで知らせに走ってくれる人だけ、貸してもらいたいなー」
また街まで行って帰ってじゃ面倒だし。私の言葉に、フォックさんはとっても嫌そうな顔をしている。
でも、結局私の申し出を受け入れてくれた。
「……わかった。後でローメニカをよこそう」
「え? 女の人一人で大丈夫?」
「……お前も女で一人じゃなかったか?」
じろりと見られて、何も言えない。フォックさんによると、実はローメニカさんは強いんだそうだ。
「腕っ節がある程度ないと、組合の受け付けなんぞ危なっかしくてさせられねえよ」
あー、血の気の多そうな人ばっかりだもんね。そういう人達を相手にするには、受け付け嬢も実力が必要なのかー。
何だか、組合を見る目が変わりそう。
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