第39話 二体目の契約幻獣

 さて、ノワールを運ぶのにどうしようかと悩んでいると、なんと天馬は自分のサイズを変えられるそうな。検索先生、いつもありがとう。特に今日は頼ってばかりだわ。


「ノワール、自分の大きさを変えられる? ブランシュくらいになってくれると助かるんだけど」

『ノワール、デキル』


 そう言うと、ノワールはするすると縮まっていって、ブランシュと同じくらいになってくれた。ダメ元で言ってみたけど、出来るんだね……


 こうなると、二匹並んでぬいぐるみみたい。可愛いなあ。これなら懐に入れてほうきで飛べるわ。あ、その前に洗浄洗浄。さっき触った時、ちょっとべたついていたから。


 この山で採れる素材は、残り少し。ノワールの件で中断しちゃったからね。後はぱぱっと採って、とっとと帰ろう。


 デンセットに寄って、魔獣の肉やら毛皮やらを組合に買い取りに出したら、あっという間にフォックさんに話が行ったらしく、捕獲されてしまった。


「何なんだ、あの量は……」


 がっくりとうなだれるフォックさんを、まあまあと受け付けのお姉さんがなだめている。前回もいたね。お名前を聞いたらローメニカさんというそうだ。


 それはともかく、状況を説明しろとの事なので、今日あった事をざっくりと説明しておく。


「えーと、必要なものを採りに行ってたら、途中で見つけたので……」

「オオカミ魔獣を二十匹もか! 群れだぞ群れ!!」


 残念、実は二十三匹だ。フォックさんはまだブツブツと「大型の個体がいなかったから、まだ若い群れか?」とか言ってる。


 ……よけておいたやつ、結構大きかったよね? と思っていたら、脳内で検索先生からのお知らせが。


 よけておいた個体がボスの、中規模の群れだったらしいよ。


「あ、そうだ。契約幻獣が増えたんですけど」

「はあ!?」


 フォックさんとローメニカさんが、驚きすぎて目を落としそうだ。そろっと懐からブランシュとノワールを出す。


「ノワール、元の大きさに戻れる?」

『ノワール、デキル』


 驚愕するフォックさん達の前で、ノワールは見つけた時と同じ大きさに戻った。二人とも、大きく口開けてるけど、顎大丈夫かな。落ちない?


 しばらくそのまま驚きに固まっていたけど、しばらくして二人は深い溜息を吐いた。


「本当に、サーリには驚かされてばかりだ」


 失礼だな。ブランシュもノワールも、探そうと思って探し出した訳じゃないんだぞー。ついうっかり偶然で知り合ったり拾っちゃったりしただけで。


 むくれる私に、フォックさんは事の重大さを噛んで含めるように私に言う。


「見たところ、この仔馬も幻獣だな? 何!? 堕天馬だとおぉぉぉ!? ……堕天馬って、黒い天馬の事だよな? それこそ、伝説の中で語られる程なんだぞ」

「え? でも黒い天馬の子って、生き残れないって聞いたけど」

「確かにそうらしいが、誰に聞いたんだ誰に。……とにかく、ブランシュといい、その……ノワールか。その子といい、連れて歩いているのがわかっただけでも狙われるから、本当に気をつけろよ?」

「大丈夫。その為に、今砦の防御を固めようとあれこれやってる最中だから。きちんと終わるまで、この子達は私と一緒に行動するし」

「防御? 一体何をするつもりなんだ? ……いや、いい! これ以上聞いたら、俺の体がもたん。何をするでも、あまりやり過ぎないようにな」

「はーい」


 もう一度ノワールに小さくなってもらって、二匹とも私の懐に。温かい。生き物の温度って、なんか落ち着くよね。


 一階に行って買い取り金をもらい、ほくほくで砦に帰る。全部で約八十五万ブールよ。いい臨時収入になったわー。


 もう時間も遅いから、これで砦に帰ろう。帰ったらまずはノワールをお風呂に入れなきゃ。一応洗浄魔法は使ったけど、やっぱりお湯に入るのは格別だからね。


 街からほうきで砦へ。盗まれるものは何もないけど、前のように魔獣に入り込まれても嫌だから、攻撃型の防御結界を張ってある。


 ……うん、目の前に、十人程転がってるね。もう一度街まで行ってこなきゃ。面倒臭いなあ、もう。

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