第37話 拾いもの
食休みをしてから、午後も元気に採掘採取。この山、ポイント多いなあ。でも、ここできっちり素材を手に入れておかないと、スケジュールが狂う。
早いとこ、セキュリティシステムを構築したいから。
地図を見ながら採掘していって、のこり数箇所というところに来て、ブランシュが懐から飛び出した。
「ちょ! ブランシュ! どこ行くの!?」
まだ飛べないのに! と思ったら、もの凄いスピードで走り出した。速!
ブランシュは猛ダッシュで山の中を突き進む。体が小さいから、倒木や岩も気にしない。下をくぐったり飛び越えたりと、まさしく障害物競走だ。
ほうきでついて行くこっちの方が大変じゃないか? これ。
「ブランシュー、どこ行くのよもう」
ブランシュの足は止まらない。山頂に向けて走ってるのは確実なんだけど、今いるここはまだ中腹だ。
と、やっとブランシュの足が止まる。と思ったら、大声を張り上げた。
「ピイィィィー!!」
うお! やっかましい! てか、ブランシュってあんな大声、出せたんだ。
当のブランシュはといえば、叫んだと思ったら藪から飛び出てまた走る……じゃない、何か黒い塊の側に近寄ってる。
何あれ?
おそるおそる近寄ってみると、黒い仔馬だ。仔馬というか、ミニチュアホース? 中型犬くらいの大きさの、ずんぐりした可愛い馬だ。
よく見たら、この馬を囲むようにオオカミっぽい魔獣が囲んでいる。なるほど、ブランシュはこの子を助けようとして走り出したのか。
でも、あんな離れた場所から、よくこの子の事がわかったね……
「とりあえず、あのオオカミどもをどうにかしようか」
まずは検索先生に問い合わせ。あれ、狩っちゃっていいやつかどうか。結果は、組合で買い取りしてくれるタイプの魔獣でした。
ならば、やる事は一つ!
「ふふふ、大猟大猟」
大きなオオカミタイプの魔獣を全部で二十三匹も狩れた。肉は安いけど、皮と牙はいい値段で引き取ってもらえるらしい。
そうか……毛皮か……。いくつか取っておけば、砦の調度品に使えないかな。
よし、使おう。ならば、良さそうな毛皮はよけておかなきゃ。こんな時にも検索先生の出番です。大きな個体三つの毛皮がいいとの事なので、この三つは買い取りに出さないよう別にしておく。
さて、次はあの黒い仔馬だな。
「ブランシュ、仔馬は大丈夫?」
「ピイ」
心配そうに仔馬を見つめるブランシュをなだめながら、その場に膝をついてよく仔馬を見てみる。あ、怪我してるんだ。
治癒魔法を使って、怪我を治す。足をやられていたみたい。そっと背中をなでたら、ふかふかで気持ちいい手触り……て、何かある。
「何だこれ? ……翼?」
もしかして、この仔馬って普通の仔馬じゃないの? いや、確かにサイズは普通じゃないけど、成獣も小さいタイプかもしれないし。
そう思って検索先生に聞いてみると、なんとこの仔馬は幻獣らしい。
堕天馬(だてんま) 天馬から非常に希に生まれる黒い個体。別に本当に堕天した訳ではなく、人側が勝手に付けたもの。
ただし、天馬族の中でも異物とみなされ、生まれてすぐに母馬に遺棄されて成獣まで育つ例はない。天馬の中でも、スペックが非常に高く生まれつくのも特徴。
なんと……この子は天馬の黒い個体なのか。そりゃ、同じ幻獣同士、ブランシュが気にかける訳だ。しかもスペックも高いとか。
それでも、生まれてすぐに捨てられるから、成獣になれないなんて。自ら親元を離れたブランシュとは違うなあ。
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