第32話 驚かれました……

 デンセットに戻ったら、まずは冒険者組合へ。


「こんにちはー。フォックさん、いますかー」


 ちなみに、ブランシュは今のところ私のマントの内側にいる。おとなしくしているよう言ったら、ちゃんとお行儀良くしているよ。賢い子だなあ。


 そういや、グリフォンはドラゴンに次いで幻獣の中では知能が高いんだっけ……ブランシュに馬鹿にされないように、頑張ろうっと。


 カウンターには、依頼処理をしてくれたお姉さんがいた。


「お帰りなさい、サーリさん。どうしたの? 途中で何かあった?」

「何もないですよ。実は、石切場の件でフォックさんに話したい事があるんだけど」

「わかったわ。すぐに案内するわね」


 お姉さんに案内されて、フォックさんの執務室に入る。


「おう、どうしたサーリ。まだ出発していなかったのか?」

「え? いいえ、もう行って終わらせて帰ってきましたよ?」

「え?」

「え?」


 そんなに変な事言ったかな……言ったな。そういや、あの石切場まで、馬車で二日くらいって話だったっけ。やっちまったー。


 驚くフォックさんは、しばしぽかんとしていたけど、さすがは人の上に立

つ人、すぐに復帰したらしい。


「……いい加減、サーリは非常識な存在だと理解していたつもりだったんだがなあ……まだまだだったらしい」

「いや、何ですかその言葉。別に非常識じゃないですよ」


 こっちの常識には疎いかもしれないけど。何せ日本生まれの日本育ちだからね。しかもこっちに呼び出されてからも、再封印の旅に出されたり王子妃やったりしていたから、今ひとつこの世界の常識がわからないままなんだ。


 でも、断じて非常識ではない……はず。


「それで? 石切場まで行って帰ってきたんだな? それはいい。その件で、何か話があるんだろう?」

「あ、そうだ。えっとですね。グリフォンは確かにいましたが、話し合いであの坑道からは出て行ってもらえました」

「グリフォンと、話し合い……」


 今度はお姉さんもフォックさんと一緒に呟いて、こっちをガン見してる。いや、幻獣なんだから、説得くらい出来るって。


 それに、本題はこれからなんだから。


「あのですね。それに関して、ちょっと相談というか、ご報告したい事がございまして……」

「何だ? 言ってみろ。これ以上、何を聞いても驚かない自信があるぞ」


 本当かなあ? まあいいや、お姉さんも何やらうんうん頷いているから、大丈夫でしょ。


「坑道の奥にいたグリフォンから、この子を預かりまして」


 そう言って、マントのなからブランシュを取り出して見せた。ブランシュはまだ孵化したばかりだから、手のひらサイズの子猫って感じ。


 そのブランシュを見せたら、フォックさんもお姉さんも固まっちゃった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る