第28話 幻獣はどこかなー?

 石切場は、デンセットの街から東南に馬車で二日くらい行ったところにある。結構離れてるんだね。


 最初組合で馬車を用意するって話だったんだけど、断った。ほうきがあるから、移動には心配はないのだ。


 テントもあるから、野営も問題ないしね。問題があるとすれば、料理のストックが切れないかどうかくらいかな。


 でも、デンセットに来る前に頑張って買いあさったから、まだまだ大丈夫。


 さて、馬車だと二日の距離だけど、当然ほうきで空を飛んだらそれより早く到着するのは当然という事で。一時間くらいで到着ー。


 石切場というくらいだから、山なのかなあと思っていたけど、本当に岩山だ。というか、岩山だらけだ。


 石切場まで敷かれた街道の脇でほうきを下りて、石切場までは歩いて行く。入り口が封鎖されていて、武装した兵士が立っていた。


「ここは立ち入り禁止だ!」

「デンセットで依頼を受けてきましたー」


 カウンターでお姉さんにもらった書類を、兵士達に見せる。目を通した兵士が、驚いて目を丸くした。


「お前が冒険者!?」

「しかも、グリフォンを討伐する!? 一人で? 冗談だろう!?」

「ちゃんと、フォックさんの許可を得てきましたけどー?」


 何かむかつく。確かに子供っぽく見えるかもしれないけど、これでも成人していて元人妻だ!


 むっとして下からにらみつけたら、兵士がばつの悪い顔をした。


「あー、確かに。ただ、石切場は本当に危険だから、気をつけろよ」

「何があっても、俺たちは助けに行けないからな」


 この人達の仕事はここの警備であって、冒険者の救出じゃないもんね。わかってるわかってる。


 それに、いざとなったら空に逃げるし。あ、でもグリフォンって飛べるんだっけ。まさかの空中戦の予感?




 舗装もされていない山道を登っていくと、開けた場所に出る。あちこちに岩盤が露出した、石切場だ。


 グリフォンが棲み着いているのって、奥だって言っていたよね。


「グリフォン、どこかな~?」


 のんきに呟きながら歩いていると、山を轟かすような鳴き声が辺りに響いた。え? これ、グリフォンの鳴き声?


 慌てて検索先生に問い合わせ。何でも、この世界のグリフォンは縄張りを示す為に威嚇の鳴き声を発するそうな。マーキングではないんだね。


 って事は、この石切場は自分の縄張りだと主張している訳か。本当にグリフォンだったのは、いいんだか悪いんだか。


 まずは相手の居場所を探そう。探索魔法で一発だから、楽だよねえ。


「お、みっけ」


 どうやら、露天で切り出している場所ではなく、下へと進んでいった奥にいるらしい。そこから鳴き声が響いているのかな。


 なので、ほうきを出して坑道を進む。あー、何か獣臭がする。幻獣って、やっぱり獣枠なのか。


 坑道内部は暗かったので、魔法の明かりを出して進む。一応、さっきの探索魔法で坑道のマップも完璧なので迷う事はない。


 グリフォンは、一番奥にいる。


 坑道に入ってからは、例の鳴き声はしない。覚悟を決めてるのか、それともこちらを誘い込んでいるのか。


「どっちかな?」


 半端な魔獣には負けるつもりはないけど、何せ相手は幻獣。力押しで何とかなればいいんだけど。


 一応、昔じいちゃんに太鼓判は押されたんだよね。お前ならドラゴンも簡単に倒せるって。あれが本当ならいいんだけど。


 ドラゴンも幻獣。しかも幻獣の中でもトップクラスで強い。グリフォンがどのくらいかは知らないけど、ドラゴンよりは下のはずだから、大丈夫だと思うんだけどなあ。いや、ドラゴンも手こずるけど。


 あいつら空飛ぶし早いから、魔法当てるの大変なんだよね。結局あいつら専用に追尾型の魔法まで開発する羽目になったし。あれもじいちゃんに「二度と使うな!」って怒られたっけ……納得いかない。


 まあいいか。ここにはじいちゃんはいないんだし。


「ん?」


 前方から濃い魔力が漂ってくる。……それと同時に、濃い瘴気も感じた。やばい、幻獣が瘴気に穢されてる?

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