第25話 探検

 さて、砦の掃除は一段落ついたから、今度こそ内部の探検といこう。一歩中に入って確認。うん、臭さはもうない。


 見れば見る程大きな砦だ。門を入ってすぐは整えられた平地で、ちょっと蛇行するように石畳が奥へと続いている。これ、道かな。


 道なりに進むと、階段の先に第二の門が見えてきた。ここは、落とし格子がある二重門。その先にはいくつか崩れた石造りの建物が見える。屋根とかがないから、焼け落ちたのか、朽ちたのか。


 建物を眺めながら右手に折れて進み、緩く大きなスロープを上った先に第三の門。振り返ると、結構高い場所に来ている事がわかる。湖に突き出した崖を利用して作られた砦だからかな。


 第三の門が最後らしく、小さく頑丈な作りをしていた。ただ、やはり扉自体は戦闘で壊れたのか、魔獣が壊したのか、大きくひしゃげて門の脇に転がっていた。金属製……青銅かな。


 一番の高台にあるのは、一番奥に四階層の塔、その脇に二階建ての大きな館。昔は、ここに多くの兵士達が暮らして戦い続けたんだろうな……


 まずは、あの塔に上ってみよう。


「うわあ……」


 塔の中は、綺麗なものだった。そりゃもう、何も残っていない程に。……水の力って凄い。


 よく見ると、壁のあちこちに何かが取り付けてあった痕跡がある。多分、ここに取り付けられていた何かは、木製だな。


 上を見上げると、天井部分に四角く穴が開いている。階段で上るんだろうけど、肝心の階段が朽ちて落ちたんだと思う。


 まあ、いいや。魔法で上れるから。


「おおー」


 塔は四階建てで、その屋上はちょっとした広さがある。そこから見る景色は素晴らしかった。


 太陽の光で輝く湖、その向こうには森と街、さらにその奥まで見渡せる。この辺り、平地がずっと続いているから、なおさら遠くまで見えるんだね。


 うん、屋上は使えるようにしよう。


 館の方は、崩れ方が激しくて、手を入れるのが大変そう。まあ、時間はたっぷりあるから、のんびり好みの形に仕上げていこう。


 あ、館に地下室発見。地下一階、二階……三階? まであるのか。


 地下一階と二階は主に食糧倉庫として使われていたみたい。地下って温度が一定だからね。保存庫に適してるって聞いた事がある。


 三階には、船着き場があった。え? 地下なのに船着き場? と思ったら、崖の下に大きく開いた洞窟の奥がここだった。


 とりあえず、ここからも外に出られるのはいい。ほうきなら、水上も行ける。


 何にしても、まずはあちこち修繕しなくちゃね。所々崩れてて通るのも大変。これからもしばらくは、テント生活だなー。

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