第24話 ご心配おかけしました

 水柱が天をついたと思ったら、砦のてっぺんからざばーっと水が流れて汚れを全て押し流していく。


 綺麗にする対象が大きければ大きい程、使う水の量も増えるんだよ。多分、おそらく……いや、そうでないと、この派手さは説明がつかないって。


 水の流れの中に、何か見ちゃいけないものとか骨とかに混ざって、大量の木材の破片とかも見えるんだけど。


 ああ、そうか。砦だから兵士用に家具や生活雑貨なんかがあったんだろう。元の形がわからないくらいばらばらだから、猪に壊されたか、木製で朽ちたかだね。


 押し流した汚れは、門まで来た途端、光となって消えていく。これぞ浄化を使用した、汚水も全く出さない洗浄魔法であーる。


 もちろん、流れてきた大量の木片も綺麗さっぱり消えた。よくわかんない破片やらゴミやらも全部ね。


 洗浄魔法を起動していた時間は、ちょっとだけ長目の三十分程度。そんだけ、この砦が汚れていたって証拠だ。


 これですっきり、と思っていたら、街から何だか砂煙が見える。馬が十頭ほど、凄い勢いでこっちに走ってきてるみたい。


 あ、フォックさんだ。一緒に来てるのは、冒険者の人達かな? 血相変えて、どうしたんだろう?


 フォックさんは砦前まで来ると、馬から飛び降りた。


「無事か!? サーリ!」

「フォックさん、どうかしたんですか?」


 何だか、向こうとこちらの温度差が激しい。私の言葉に、フォックさん達はやたらと驚いている。いや、だからどうしたんだってば。


「街から見える程の水柱が砦に立ったから、何事があったのかと、様子を見に来たんだが……問題ないようだな」


 やべ、あれ、街からも見えてたんだ……


「えーと、ちょっと砦の掃除に水の魔法を使ったんですが……」

「あれがちょっと!? しかも、掃除の為!?」


 フォックさんも冒険者の人達も、凄くびっくりしてる。あれ? 北では、魔法って珍しいの?


 首を傾げていると、フォックさんが深いため息を吐いた。


「そういや、サーリは魔法士だったな……それに、魔力も桁違いに多い……すっかり忘れていたよ」


 ははは、とうつろに笑うのは、何だか怖いですよ。でも言えない。なんとなく日本人的なアレで、愛想笑いを貼り付けておいた。


「とにかく、あまり派手な事はするなよ。いらないところに目を付けられかねん」

「はーい」


 いらないところって、どこだろうね。でも、フォックさんがそう言うのなら、そうなんだろうな。なんとなくだけど、このおじさんは人が好さそうだ。

 フォックさんはそのまま、一緒に来た冒険者達と共に街に帰っていった。今度から、派手な魔法を使う時は、周囲にそれとわからないように誤魔化しながら使おうっと。

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