第15話 デンセット

 食材を買った街から、ほうきで飛んで約二時間。馬車より少し速いくらいで飛んでるから、こんな感じ。


 遠目に街が見えてきた。大きな湖のすぐ側にある、コーキアン領デンセットだ。市場のおばちゃんが、コーキアン領に行くならデンセットに行くといいって薦めてくれた。大きな湖が目印だとも言ってたっけ。


 デンセットの少し手前にある丘の上に下りる。ステルスを起動してるから、街道から丘を見ても私の姿は見えない。


 そのまま丘を下りて、途中からステルスを解除、そのまま街道に出た。結構人通りが多い。ステルスを起動させておいて良かった。


 しれっと街道に入ったけど、誰もこっちには見向きもしない。大きな荷馬車にたくさんの荷物を積んでいる人、疲れた顔で歩く親子連れ、武装した男達。誰もが目の前の街、デンセットを目指してる。


 街に入るのに税金として銀貨一枚。大体五千円相当。他には身分証とかは一切必要なし。随分と緩いなあとは思うけど、そのおかげで身分の怪しい私も入れるんだから、文句は言わない。




 街の中は、思っていた以上に綺麗。入った門から伸びる大通りを進むと、噴水のある広場。教会があって鐘楼もある。大きな建物は、ここに集中しているらしい。


 さて、仕事を探すには斡旋所に行くのが一番だけど、どこかな。ぐるっと見回すと、外にまで列が出来ている建物がある。


「さあさあ、仕事を探している人はこっちだよー!! 当斡旋所はご領主様からの許可状のある、きちんとした斡旋所だ! いい仕事がたくさんあるよー!」


 ……斡旋所って、呼び込みするんだ。でも、おかげで場所がわかったからいいや。


 列に並べばいいのかと思ったんだけど、さっきの呼び込みをしていたおじさんが私に気づいた。


「お嬢ちゃん、見かけない顔だね。この斡旋所は初めてかい?」

「はい、そうですけど……」

「ああ、じゃあこっちだ。おーい、初めての子だ、頼むよー」


 おじさんが中に声をかけると、「はーい」という返事と共に若い女性が出てくる。


「初めての子ね? じゃあ、こっちにどうぞ」


 女性の後について中に入ると、斡旋所の中は想像以上に人がいた。こんなに広いのに、外にまで列が出来るんだ……それだけ、この街には仕事があるって事なのかな。


 入ってすぐは吹き抜けのロビーになっていて、左右にカウンターがずらりと並んでいる。ロビーには椅子もあるけど、座っている人は殆どいない。大抵カウンターに並んでいた。


 カウンターの上には「土木関連」とか「雑用」とか書かれている。どうも、斡旋する仕事ごとに別れているらしい。自分に出来る仕事を斡旋してくれるところに並べばいいのか。


 きょろきょろと見回している私を連れて、女性は奥にある階段を上って二階へと上がった。


「こちらで登録してください」

「登録?」

「ええ。名前や特技なんかを登録してタグを発行するんです。そうすれば、次回から下のカウンターで仕事を受けられます。ただし、自分の能力に見合った仕事しか紹介出来ませんから、気をつけてね」

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