第14話 おばちゃんの話は為になる

 ローデンの人達は、多分私の行方を捜すと思う。「私」が大事なのではなくて、「神子」という立場が大事だから。


 邪神の封印をローデン主導で行ったって事も大きいけど、封印した神子が自国にいるってのも大事だって、誰かが話していたから。


 そこまで言われたら、いつまでもその場所にしがみついていたくはないよね。行こうと思えば何処へでも行けるんだもん。実際、城を出て北ラウェニアまで一人で来たし。これからも一人で生きていくよ。


「ダメダメ、暗い考えはこの先はなしで!」


 つい、ローデンでの事を思い出して落ち込みかけたけど、過去にいつまでも振り回されてちゃいけない。


 振り切る為にも、口に出して言っておく。言葉には力が宿るんだから、願い事は口に出して言っておけって、ユリカおばあちゃんも言っていたし。


 ユリカおばあちゃん……。両親はお互いがいればいいって人達だから、多分私の事も心配はしていないと思う。


 私はいいけど、ユリカおばあちゃんのお墓がどうなってるか、凄い心配。


 ごめんね、おばあちゃん。名前を借りるくらい大好きだから、ユリカおばあちゃんのお墓は私がちゃんと守っていくって決めてたのに。


 あの親じゃいまいち効力ないだろうけど、手紙くらい、日本に送れないかな……絶対、お盆もお彼岸も忘れると思うから。


 こっちに召喚された時に、帰る事は出来ないって言われて諦めたっけ。でも、帰る方法を探した訳じゃないから、もしかしたらあるのかな。


 でも、どこをどう探せばいいのかもわからない。検索先生も、こればっかりは何も答えてくれないし。八方塞がりって、こういうのを言うんだっけ?


 ……ダメだなあ。早速躓いてるよ。


「ま、まあ、あれだ! 気分を変えて、行ってみよう!」


 空元気も、元気のうちって誰かが言ってた。だから、大丈夫。……多分。


 それにしても、一人で行動しているせいか、独り言が増えた。何か、変な人みたいで嫌だなあ……




 ダガード王国に入ったはいいけど、どの街に行こう? この国の情報、何にも仕入れてないんだよね……


 しょうがないから、一度街に下りて食材を買いつつ店のおばちゃんにこの辺りについて聞いてみた。


「一番北って言ったら、コーキアン領かねえ。あそこは海を隔てて魔大陸が見えるくらいの場所だから、被害もそりゃあ酷いって話だよ。そんなところに行く気かい?」

「うん、もう魔物は来ないって聞くし。だったら、復興の人手を欲しがってる場所の方が、仕事があるかなあって」

「あんまりおすすめはしないねえ。あんたみたいな女の子が一人で」


 う……。もう成人しているんですけど。何なら、ついこの前まで結婚していたんですけど。でも、それをここで言う訳にもいかないし。


 曖昧に笑って、とりあえずコーキアン領ってところを目指す。封印の旅の時は、通らなかった場所だ。あの時は、確かウーズベルって領から船に乗ったはず。


 さっきの街でちらっと見た地図では、ウーズベルはコーキアンの東隣の領みたい。ウーズベルの方が領としては小さいけど、北と東に海がある。その東側から、船に乗ったっけ。


 どっちも北の海に面した領だけど、魔大陸に渡る際に魔物被害が少しでも少ない場所から船に乗ったんだった。




 コーキアンか……どんなところなんだろう。

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