第13話 入国しました!
国境では、入国税を支払うのと、入国理由を聞かれた。
「仕事を探しに来ました」
「え? 君みたいな子供が?」
子供って……こっちの国でも日本でも、成人年齢に達してるんだけど。むっとしたのが伝わったのか、警備兵のおじさんが慌ててる。
「いや、その、若い女の子が一人で国を渡るのは、危険だから」
「私、魔法士です。魔物も一人で倒せるので、問題ありません」
「そ、そうなのか……」
こっちの国では、魔法士って少ないって聞いてる。魔力を持ってる人は多いんだけど、大体火種が作れるとかコップ一杯の水が出せるとかくらいらしい。単独で魔物を狩れるクラスの魔法士は、貴重なんだって。
だから警備兵のおじさんも驚いたのかも。とりあえず、無事ダガードに入れたからいいや。
国境を越えたくらいじゃ、景色なんかは変わらない。相変わらず乾いた大地が広がる、荒涼とした光景だ。
ダガードに入って、すぐに人目に付かない場所を探す。空を行くのはいいけど、飛び立つところを見られるのはなあ。
ふと、視線を感じた。魔法で確認すると、国境前で絡んできたおじさん二人組。まだ諦めていなかったんだ。
幻影の魔法を起動して、街道を進むように見せかける。おじさん達は、そっちに引っかかった。その隙に、近くに見えた岩場の陰へゴー。
無事ほうきを取り出して乗り、空へと飛び立った。ちょっとだけ下を確認すると、あのおじさん達、まだ幻影を追いかけている。
普通に歩いているように見せかけているけれど、おじさん達との距離が縮まらないようになってるから、どんなに急いでも捕まえられないのにね。
あれは時限式の魔法だから、一定時間が経てば消える仕組み。なので、このまま放っておいても問題なし。ほうきの高度を上げて、一路北へ。
ダガードのどの街に入るかは決めてなかったけど、とりあえず王都はなし。貴族が集まりやすい場所は、避けるが吉。
ローデンの追っ手を警戒した訳ではなく、単純に国の上層部って神子の顔を知ってる可能性が高いから。
ローデンか……あの城を出てから、まだ数日なんだよね。こちらの世界は情報伝達のスピードが遅いから、まだローデンから神子が出て行ったって話は、こっちには届いていないと思う。
でも、気を抜かない方がいいんだろうなあ。神子だとバレると面倒だと思うから。
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